「通貨」はこれからどうなるのか(浜矩子 著)-それは知りたいところですが・・
「それでも円は、日本は強い!」「1ドル50円代は必ず来る」という浜矩子氏の”「通貨」はこれからどうなるのか”という本についてです。
この本で「通貨」がこれからどうなるのかについては、正直よくわかりません。筆者の主張では、円高の流れを是正しようとするのではなく、ドル高修正に向かう流れを形成すれば、やがて我々がドルの軛(くびき)から解放されるとしています。ドルの需要が減ってドルを使う人々が減少すれば、その通貨の価値がどうなろうとも、誰も痛くも痒くもなく、円高の進行はそうした世界へ近づくプロセスとしています。
確かにドルが基軸通貨と言われるように強いポジションにありすぎるのかもしれませんが、仮にドルの地位が下がっても、資源国でない日本は、結局産油国の通貨などに左右されることになるというだけなのではないかという気もします。
ユーロ圏ついては、相変わらず崩壊するという主張です。むしろ、ユーロ圏の崩壊は絶対に阻止するというようなECBの立場に対して批判的です。
それで、結局解決策はなんなのかという点については、なんと21世紀的解答は「地域通貨」だとしています。ユーロも地域通貨じゃないの?という感じはしますが、ここで紹介されている「地域通貨」はもっと局地的に流通している通貨のことです。
いくつか事例が紹介されていますが、地域通貨が法定通貨以上にその地域で回転することによって景気がよくなるというのが言いたいことのようです。
紹介されている地域通貨の一つにスイスの「ヴィア」という地域通貨があります。この地域通貨は70年以上も継続しているそうで、運営母体は1934年に設立された中小企業の互助組織とのことです。この通貨は当初、期間限定・価値漸減通貨だったそうです。
期間限定・価値漸減通貨というのは、利子がついて時間の経過とともに価値が増えていくのと正反対に、時間がたつにつれて価値が低下していく通貨のことです。例えば、現在100円の価値があるとして、1週間後には98円、2週間後には95円というように価値が下がっていき、1年後には0になるというような通貨です。
もっているだけだと価値が減っていくので、お金を使う→経済が回るという理屈のようです。なお現在では、価値減価方式は廃止されており、投融資にも使われているそうです。
理屈としてはうまくいきそうにも思いますが、日本で以前実施された地域振興券がものすごく効果があったという話は聞かない気がしますので、上手くいくのかいかないのかの決め手は何なのかについてはわかりません。また、スイスフランの強さが前提として地域通貨がなりたっているかについても、定かではありません。強いてあげれば、中央政府の存在感が、他国に比べて希薄で、スイスは初めに地域ありきだとしているので、これが重要なポイントであるならば、日本はどうすればいいのかという点についても、きちんと分析してもらいたいところです。
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