四半期の税金費用で通期損失の場合に使用する実効税率とは?
四半期の税金計算を簡便法によって見積実効税率を使用している場合で、2Qで損失・通期でも損失見込みの場合に税金計算をどのようにすべきかについてです。
法定実効税率を用いて計算すればいいだけでは?と思いましたが、ここで疑問が一つ。それは、その法定実効税率は今期に適用される法定実効税率を単純に用いればよいのだろうか?という点です。
「改正法人税法及び復興財源確保法に伴い税率が変更された事業年度の翌事業年度以降における四半期財務諸表の税金費用に関する実務上の取扱い(実務対応報告第29号)」のQ2のA(1)の最後には以下のように規定されています。
見積実効税率を用いて税金費用を計算すると著しく合理性を欠く結果となる場合で、法定実効税率を使用する方法(中間税効果実務指針第11項)によるときには、中間税効果実務指針第12項に準じて処理する。
そこで、中間税効果実務指針第12項を確認すると、以下のように規定されています。
(法定実効税率を使用する方法)
12.第11項により、見積実効税率が使用できない場合は、具体的には以下のとおりとする。
(1) 上期が利益の場合
税引前中間純利益に法定実効税率(中間会計期間を含む事業年度における納付税額の算出基礎となる税率をいう。この項において以下同じ。)を乗じて税金費用を計算する。ただし、一時差異等に該当しない差異が重要な場合には、その金額を税引前中間純利益に加減した上で法定実効税率を乗じるものとする(「設例4」参照)。(2) 上期が損失の場合
税引前中間純損失に法定実効税率を乗じて税金費用を計算する。ただし、一時差異等に該当しない差異が重要な場合には、その金額を税引前中間純損失に加減した上で法定実効税率を乗じるものとする(「設例5」参照)。
税引前中間純損失に法定実効税率を乗じて計算した税金費用に対応する中間貸借対照表上の資産の額は、第7項に従い、当期首における繰延税金資産の額とともに繰延税金資産の回収見込額を限度として計上する。
本項の適用に当たり、中間会計期間中に適用税率が変更された場合には、当該中間会計期間を含む事業年度の末日に存在すると見込まれる一時差異及び税務上の繰越欠損金額を見積もり、税率変更による繰延税金資産及び繰延税金負債の修正差額を上期及び下期に合理的な方法により配分し、上期に配分した修正差額を中間会計期間における税金費用に加減するものとする。
上記では明らかに法定実効税率を「中間会計期間を含む事業年度における納付税額の算出基礎となる税率をいう」と定義されています。したがって、実務上は簡単だし、今期に適用される実効税率を用いて計算すればよいということで終わりにしたいところですが、本当にそれでよいのかが気になります。
上期損失で通期も損失見込みの場合、重要な「一時差異等に該当しない差異」がある場合には、「その金額を税引前中間純損失に加減した上で法定実効税率を乗じるものとする」とされています。これは、「一時差異等に該当しない差異」に重要性がないのであれば、原則法で計算しても税金費用は税前損失×法定実効税率で計算した結果と大差ないためであると考えられます。現に、中間税効果実務指針の設例4および5におていは、「この場合、原則法と簡便法は、税金費用を個別計算するか一括計算するかの違いでしかなく、計算結果は一致している。」あるいは「この場合、一時差異及び繰越欠損金相当額に係る繰延税金資産の計上額に原則法と簡便法との間に差異はなく、両者の計算結果は一致している。」と原則法と簡便法の計算結果の一致が強調されています。
これは、当然といえば当然で、原則法と簡便法で結果が大きく異なるようなことはないと考えるのが自然です(退職給付債務の計算における、簡便法と原則法のように結果として計算結果が大きく異なるものもありますが・・・)。
そう考えるならば、当期に適用される法定実効税率のみを用いて単純に計算するというのでは足りないというように考えられますが、どのような税率を使用すべきなのかがわかりません。一つのアイディアとしては、法定実効税率の使用が2Q末時点で発生していると考えられる繰越欠損金に対して税効果を計上していると考えるなら、復興特別法人税が課せられる期間とそれ以降の期間のそれぞれの期間において解消が見込まれる繰越欠損金の金額の割合で法定実効税率を加重平均してみるということが考えられます。
考えれば考えるほどよくわからなくなりますが、中間税効果実務指針21項(結論の背景)では「簡便法の適用において、第9項の見積実効税率を用いて中間会計期間に係る税金費用を計算すると著しく合理性を欠く結果となる場合には、中間会計期間に係る税金費用を税引前中間純損益に法定実効税率を用いて計算しなければならないこととした。」とされています。
「法定実効税率を用いてしなければならない」ということなので、結局のところやはり最初に考えたように単に当期に適用される法定実効税率を適用するればよいということではないかと思います。
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