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連結納税導入企業の税務調査対策とは?

既にいくつか気になった記事を紹介している税務弘報2012年9月号ですが、もうひとつ気になる記事がありました。それが「連結納税導入企業の税務調査対策」という記事です。

連結納税のデメリットについては、”連結納税(その5)-連結納税のデメリットは?”というエントリで記載していますが、ここで掲げたデメリットの加えて、税務調査対応の手間が増えるというものもあるということがわかりました(広い意味では「事務処理負担が増加する」に含まれますが・・・)

上記の記事では、「連結納税の仕組み上、グループ内にある法人の所得が異動すると全社の所得に影響が及ぶ。税務調査で否認事項のあった法人は、その否認理由が何であれ、その後しばらくはグループ内で肩身の狭い思いをするようである。」と述べられています。グループ全体が大きくなればなるほど、影響を与える範囲が大きくなりますので、正直そのような会社で税務を担当したくはありません。

税務調査で否認項目が何もないことは少ないうえ、グループが大きければグループ内のいずれかの法人が税務調査を受けている可能性が高く、そのため自社が調査対象でなくとも毎年なんらかの対応が必要になってしまいます。連結納税の対象となる法人税についてはまだしも、地方税については各法人で修正申告又は更生の手続きが必要となるため、事業所数が多い会社にとっては事務負担が馬鹿にならないようです。

連結納税導入企業の税務調査対策としては、導入初期とその後の連結事業年度で以下のような点が述べられています。

1.連結導入期における税務調査対策

①申告書作成レベルの均質化
これは、税務調査対策というよりもそれ以前の内容のような気はしますが、前述のとおり連結納税対象会社の単純な集計ミス等が後の税務調査でグループ全部の会社に影響を及ぼすことになります。したがって、連結納税対象会社の処理レベルをある一定以上にする取り組みが必要になるとされています。

②連結納税開始時(加入時)の時価評価の妥当性立証資料の整備

連結加入時に時価評価が必要な法人については、時価評価対象とした資産に漏れがないか、時価が妥当かの検証が行われるとされています。そして、「時価評価で必ず論点となるのが営業権(自己創設のれん)」であるとされています。

営業権の評価方法については規定したものは法人税法基本通達12の3-2-1以外にないが、「著者の経験上は、いわゆる差額概念による営業権価額が調査官の念頭に置かれ、その価額が議論の前提とされることが多い。差額概念による営業権とは、買収価額と買収時の時価純資産額との差額を営業権とする考え方である」と解説されています。

このため、以下のような観点で事前に検討しておくことが必要と述べられています。

・営業権の時価について検討はしているか。算定根拠を示すことができるか。

・買収時に株価に営業権価額が直接的に反映されている場合、その株価算定書の金額と、実際の営業権時価評価額に矛盾はないか。金額が異なる場合はその理由を説明できるか。

・買収価額から時価純資産額を控除した金額と、実際の営業権時価評価額との差額要因について、いわゆる支配権プレミアム等として合理的な説明ができるか。

2.その後の連結事業年度の税務調査対策

その後の連結事業年度については、税務調査対策というよりは、申告書作成にあたり注意すべき点が述べられています。挙げられている項目と簡単な内容をまとめておきます。

①属性情報
これは、譲渡損益の調整等を適切に行うためには、グループ内の連結納税加入法人が明確になっていなければならないので、リアルタイムで属性情報がグループ内で共有される必要があるとされています。

②連結子法人株式の帳簿価額修正

これは、特にグループ内で連結子法人株式を譲渡した場合に帳簿価額修正を失念しないように注意が必要とされています。また、帳簿価額修正が必要となる時期についても注意が必要とされています。

③連結欠損金

これは、特定連結欠損金とすべき金額が非特定連結欠損金として計算されていないか、特定連結欠損金は自社の所得限度で使用しているかが税務調査で確認されるとされています。

④受取配当金益金不算入

これは、単体納税時代に別表八を作成したことがない子法人で集計ミスが生じることが多いので、事前研修や必要項目の金額集計ツールを活用するなどの工夫が必要と解説されています。

⑤連結法人税個別帰属額・納税充当金

連結法人税個別帰属額は、単体法人には存在しない項目であることから、連結納税導入初期の法人において調整ミスが多発する項目と解説されています。ちなみに、連結法人税個別帰属額は、受け取る法人では益金不算入、支払う法人では損金不算入となります。また、親子法人間で連結法人税個別帰属額を精算しないことも可能です。

⑥その他指摘を受けやすい項目

その他指摘を受けやすい項目として、以下の項目が挙げられています。
・所得税額控除
・外国税額控除
・試験研究費の税額控除
・貸倒引当金

連結納税導入企業の税務調査は面倒だというのは、覚えて置いた方がよさそうです。

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