共通支配下の事業譲渡における税効果がよくわかりません
上記のような処理は、税務上ののれんと呼ばれる資産調整勘定は、「税務上,5年間の均等償却を行うことで各事業年度の損金として算入しなければならず(法人税法62条の8④⑤)、また、差額負債調整勘定は5年間の均等償却を行うことで各事業年度の益金として算入しなければならない(法人税法62条の8⑦⑧)。すなわち、資産調整勘定または差額負債調整勘定は税効果会計における一時差異となることから、会計上、これに対応する繰延税金資産または繰延税金負債を計上したうえで、配分残余として会計上ののれんを算定することになる点に留意が必要である(企業結合適用指針378-2項。設例3-37)。」ためとされています。(組織再編ハンドブック 有限責任監査法人トーマツ P659)
ここで、疑問点は何故「資産調整勘定」についてだけ事業譲渡の受け入れ仕訳時に税効果を認識するのだろうかという点です。つまり、「資産調整勘定」が一時差異であることは間違いないので、税効果の対象となるにしても、上記の設例でいえば諸資産についても会計上の簿価と税務上の簿価に差が生じているはずですが、この部分も一時差異として税効果の対象とはならないのだろうかという疑問です。
上記で引用されている企業結合適用指針378-2項は、「繰延税金資産及び繰延税金負債への取得原価の配分」に関する規定です。取得原価を配分するという考え方は、取得の会計処理の考え方で、「共通支配下の会計処理」とは別物ではないかと考えてします。
両者の根本的な違いは、取得の会計処理の場合は元々財務諸表に計上されていたか否かにかかわらず価値があるものは時価評価して取得原価を配分するという処理が行われるに対して、共通支配下の会計処理の場合は、移転直前の適正な帳簿価額を引き継ぐことになるため、計上されていなかったものは基本的に計上されないという点にあるのではないかと思います。
親会社から子会社へ事業譲渡した場合に生じる「資産調整勘定」は、子会社で計上されるものであり、移転直前の適正な帳簿価額というものは存在しないはずです(移転して初めて生じるので)。
このように考えると、上記設例における会計上の仕訳は、単にのれんが180となって終わりではないのかという気がしてしまいますが、共通支配下の取引の場合に「資産調整勘定」分だけ税効果を織り込んで「のれん」が算定されるのはなぜなのか、さらにいえば共通支配下の取引においてどのタイミングで税効果を認識すべきなのかが基準には明確には書いていないように思います。
会計基準を作成しているような方が書いているので、おそらく上記のような処理が正しいのだと思いますが、いまいち納得がいきません。そのうち、納得できる回答が見つかったらまた書きたいと思います。
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