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消費税「総額表示義務の特例」とは?

今回は消費税の総額表示義務の特例についてです。消費税の増税が延期されるのではないかという淡い期待を抱きつつも、準備期間を考えると早めにフォローしておく必要がある論点だと思います。

消費税の総額表示義務の特例については、「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法案」(以下「総額表示義務の特例を定めた転嫁対策法案」)第10条で規定されています。ただし、この法案は現在参議院で審議中(平成25年5月17日以降)です。

総額表示義務の特例を定めた転嫁対策法案10条

加筆版

 (総額表示義務に関する消費税法の特例)
第10条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の価格を表示する場合において、今次の消費税率引上げに際し、消費税の円滑かつ適正な転嫁のため必要があるときは、現に表示する価格が税込価格であると誤認されないための措置を講じているときに限り、消費税法第63条(総額表示義務)の規定にかかわらず、税込価格を表示することを要しない。
2 前項の規定により税込価格を表示しない事業者は、できるだけ速やかに、税込価格を表示するよう努めなければならない。
3 事業者は、自己の供給する商品又は役務の税込価格を表示する場合において、消費税の円滑かつ適正な転嫁のため必要があるときは、税込価格に併せて、消費税を含まない価格又は消費税の額を表示するものとする。

原文

(総額表示義務に関する消費税法の特例)
第十条 事業者(消費税法(昭和六十三年法律第百八号)第六十三条に規定する事業者をいう。以下この条において同じ。)は、自己の供給する商品又は役務の価格を表示する場合において、今次の消費税率引上げに際し、消費税の円滑かつ適正な転嫁のため必要があるときは、現に表示する価格が税込価格(消費税を含めた価格をいう。以下この章において同じ。)であると誤認されないための措置を講じているときに限り、同法第六十三条の規定にかかわらず、税込価格を表示することを要しない。
2 前項の規定により税込価格を表示しない事業者は、できるだけ速やかに、税込価格を表示するよう努めなければならない。
3 事業者は、自己の供給する商品又は役務の税込価格を表示する場合において、消費税の円滑かつ適正な転嫁のため必要があるときは、税込価格に併せて、消費税を含まない価格又は消費税の額を表示するものとする。

10条1項によると「表示する価格が税込価格であると誤認されないための措置を講じているときに限り」総額表示を行わなくてもよいということになります。
そのため、どのようなものから「表示する価格が税込価格であると誤認されないための措置」として認められるのかが問題となりますが、この点については法案確定後に国税庁からガイドラインが示される方針のようです。

上記10条2項では、税込表示を行わない事業者は「できるだけ速やかに、税込価格を表示するよう努めなければならない」とされています。しかしながら、同法案の施行期限は附則3条において、平成29年3月31日までとされています。したがって、8%から10%への移行期間の間もこの特例は生きていることになり、8%から10%への変更も考慮してどのように対応するのかを検討しないと無駄にコストがかかることになります。

このような観点も考慮のうえ、「表示する価格が税込価格であると誤認されないための措置」として認められるであろう表示方法を考えると「XXXX(税抜価格)+消費税」という表示が無難なのではないかと思います。

この表示方法の特例ですが、注意が必要なのはその施行期日です。すなわち、附則第1条において「この法律は、社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律(平成二十四年法律第六十八号)の施行の日前の政令で定める日から施行する。」とされています。

上記で「政令で定める日から」とされていますので、この特例の利用可能開始日は平成26年4月1日ではなく、それ以前の日から利用可能となり、現時点においては10月1日、11月1日などが有力視されている(T&AマスタNo499号)とのことです。

したがって、1年に1回程度の改訂が行われる商品カタログや、販売期間が比較的長期に及ぶ商品の価格表示などについては、上記の法令の施行日に注意の上、パッケージやカタログ等の制作を調整することが無駄なコストを削減する上では重要となると考えられます。

総額表示による消費者の利便性というのは確かにあるとは思いますが、消費税の額を意識できる税抜表示も、税の負担およびその使用に対する国民の意識を高める効果があるように思うので、再度検討の余地があるのではないかと思います。

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