資産の貸付けに関する消費税の経過措置(その2)
今回は前回に引き続き資産の貸付けに関する消費税の経過措置についてです。
前回触れることができなかった所有権移転外ファイナンス・リースの取り扱いを中心に確認します。
1.リース取引に係る消費税の基本的な処理
最初にリース取引に係る基本的な処理を確認しておくと、法人税法の所得計算上、ファイナンス・リースはすべて売買があったものとして取り扱うものとされています(法人税法64条の2①)。
そして、消費税法上は、事業者が行うリース取引の処理については、法人税の取扱いにより判定することとされています(消費税法基本通達5-1-9)。
したがって、所有権移転外ファイナンス・リースであってもファイナンス・リースについては、リース物件の引き渡しを受けた日の属する課税期間でリース料の総額に対する消費税法を一括控除するのが消費税法上の原則となります。
譲受人の経理処理を示すと以下のようになります。
①購入時(リース開始時)
借)リース資産 XXX
仮払消費税等 XXX
/貸)リース債務 XXX
②リース料支払時
借)リース債務 XXX
/貸)現金預金 XXX
なお、実質的に金銭の貸付けと認められるリース取引については、従来から金融取引として取り扱われており、特にこの取り扱いに変更はありません(法人税法64条の2②)。
また、オペレーティング・リースは法人税法に規定するリース取引には該当しないため、賃貸借処理を適用することに問題は生じません(法人税法64条の2③)
2.賃貸借処理されている所有権移転外ファイナンス・リースの取扱い
上記のとおり法人税においても所有権移転外ファイナンス・リースを売買処理するのが原則ですが、一方で、所有権移転外ファイナンス・リースについて、賃借人が支払うべきリース料の総額を賃借料として損金経理した場合には、償却費として損金経理をした金額に含まれるとされています(法人税法施行令131条の2③)。
このような処理が認められる理由は、「リース取引の会計・税務」(監査法人トーマツ)において以下のように述べられています。
リース料がリース期間にわたって均等に支払われる限り、賃借人が賃貸借処理を行いリース費用のすべてを支払リース料として処理した場合におけるリース費用の各期の配分額は,原則どおり、リース資産をオンバランスで計上し,定額法(定額で認識する支払利息及びリース期間定額法による償却費の合計額をリース費用として認識する方法)あるいは利子込み法(リース期間定額法による償却費をリース費用として認識する方法)でリース費用を認識した場合の配分額と同額になるため,特段の税務調整・別表記載は不要になることを考慮したものと考えられます。
これにより、企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリース取引で、リース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下のリース取引など、リース会計基準上売買処理によらずに賃貸借処理によることが認められているものや、リース会計基準を適用していない中小企業においては、所有権移転外ファイナンス・リースを賃貸借処理していても法人税法上は特に問題ないということになります。
一方で消費税法においても、消費税法基本通達11-3-2で以下のように述べられています。
(割賦購入の方法等による課税仕入れを行った日)
11-3-2 割賦購入の方法又はリース取引による課税資産の譲り受けが課税仕入れに該当する場合には、その課税仕入れを行った日は、当該資産の引渡し等を受けた日となるのであるから、当該課税仕入れについては、当該資産の引渡し等を受けた日の属する課税期間において法第30条第1項《仕入れに係る消費税額の控除》の規定を適用するのであるから留意する。 (平20課消1-8により改正)
(注) リース取引において、賃借人が支払うべきリース料の額をその支払うべき日の属する課税期間の賃借料等として経理している場合であって も同様である。
問題は、上記の注書きの部分です。上記の注書きからすれば、法人税法上賃貸借処理を行っていたとしても、リース資産の引き渡しを受けた日が原則として課税仕入れを行った日となります。
しかしながら、日本税理士連盟から実務上の混乱を防止するため所有権移転外ファイナンス・リース取引について、賃借人が賃貸借処理をしている場合には、そのリース料を支払うべき日の属する課税期間における課税仕入れとすることの要望があったことなどを受けて、国税庁は「所有権移転外ファイナンス・リース取引について賃借人が賃貸借処理した場合の取扱い」という質疑応答事例を公表しました。
この質疑応答事例においては「移転外リース取引につき、事業者(賃借人)が賃貸借処理をしている場合で、そのリース料について支払うべき日の属する課税期間における課税仕入れ等として消費税の申告をしているときは、これによって差し支えありません。」という見解が示されています。
すなわち、結論としては、経理上賃貸借処理されている所有権移転外ファイナンス・リースについては、消費税法上も賃借料の支払時に仮払消費税を分割控除して問題ないということになっています。
3.賃貸借処理と経過措置との関係
所有権移転外ファイナンス・リースと消費税の関係を整理すると、「所有権移転外ファイナンス・リースについては、リース物件の引き渡しを受けた日の属する課税期間でリースの総額を一括控除することを原則としつつ、賃借料処理した場合には、リース料の支払の都度、分割控除を選択することも認める」という整理になっています(「改正消費税のポイントとその実務」(税務研究会出版局 熊王征秀著))。
そして、「(一部)施行日前に引き渡しを受けたリース物件、(一部)施行日以後に支払うリース料を分割控除する場合にも旧税率が適用されることになりますが、これは、経過措置が適用された結果、旧税率の適用になるのではなく、(一部)施行日前にリース物件の引き渡しを受けたことにより、当然に旧税率が適用されるということです」と述べれています(「改正消費税のポイントとその実務」(税務研究会出版局 熊王征秀著))。
イマイチわかりにくいですが、消費税法上はあくまでリース資産の引き渡しを受けた日が課税仕入れを行った日となり、これは所有権移転外ファイナンス・リースを売買処理しようが賃貸借処理しようがかわらず、課税仕入れを行った日の消費税額を一括控除するか分割控除するかの違いにすぎないということのようです。
ということは、賃貸借処理される所有権移転外ファイナンス・リースについては、当初の予定通り税率の改正が行われるとすると平成26年3月31日までにリース資産の引き渡しを受けた場合は継続して5%が適用されるということになると考えられます。
日々成長