新興国ではこのような課税問題に気を配る必要があるそうです-経済産業省資料より
平成25年9月に経済産業省の貿易経済協力局貿易振興課から「新興国における課税問題の事例と対策(詳細版)」が公表されました。
この資料では、「中国、インド、ブラジル、インドネシア、タイ、フィリピン、ベトナム、マレーシアを中心とした新興国に多く見られる移転価格課税やPE 認定等に関する課税事案の具体例」が紹介されています。
取り上げられている項目の国別の件数は上記の並び順ですが、中国とインドが多くなっています。イメージ通りというところでしょうか。
新興国における課税問題の具体例としては以下の3つが取り上げられています。
- 移転価格課税
- ロイヤルティ
- PE認定
紹介されていた項目のうち興味深いものを以下で紹介しておきます。
1.移転価格課税
中国における事例として以下が紹介されています。
ハイテク企業認定管理弁法の認定を受けると、税率の優遇があるが、そもそも認定の条件として無形資産の保有がある。そのため、この無形資産分について上乗せした利益率を求められ、利益率が低いと判断された場合には、移転価格課税による更正を受けるリスクが高まっている。
認定を受けて税制の優遇を受けるとよいことばかりではないという点は注意しておく必要がありそうです。
移転価格税制で予想していない追徴を避ける方法としては、事前確認制度を利用することが紹介されています。「税務当局から事前に確認を受けることができれば、その算定方法等に基づき申告を行う限りにおいて、移転価格課税が行われることはない」ので、このような制度が存在することは覚えておいて損はないと思います。
2.ロイヤルティ
新興国全般の事例として以下が紹介されています。
ロイヤリティの支払いは利益への対価であるという考え方により、現地子会社が赤字の場合や利益が十分に出ていない場合には、ロイヤリティの支払いに見合うだけの便益を享受していないという理由で、現地子会社が支払ったロイヤリティを損金処理することが否認される場合がある。
現地で外部のコンサルに報酬を支払っても利益がでなこともあるだろ!という気はしますが、これも注意が必要です。
なお、このようなケースは中国、インドで近年多く指摘されているそうなので、特に中国とインドでは注意が必要です。
また、タイでは一般的に「3-5%を超えるロイヤリティ料率は税務当局の移転価格調査対象となるリスクが高い。」という点も考慮が必要です。
3.PE認定
以下はいずれも役務提供に対するPE認定の中国の事例として紹介されているものです。
6ヶ月を超えない短期滞在である場合はPE 認定されないことが日中租税条約に定められているが、6ヶ月基準の定義が曖昧で、1ヶ月に1日ずつ滞在し、それが6ヶ月を超えるような場合にまで PE 認定された。
出向社員の給与などを親会社が立て替えている場合に、人的役務の提供としてその対価を回収しているとして出向者が我が国親会社の PE として認定され、営業税の課税対象とされた。また、PE認定を受け入れなければ納税証明書を発行してもらえず、海外送金させてもらえない。
いずれも細かい背景等は記載されていないため、ここだけをクローズアップするのは妥当ではないかもしれませんが、そんなこともあるのだと理解しておく必要はありそうです。
その他留意しておくべき新興国の税制の特徴
上記の他、その他留意しておくべき事項として、手続き面の問題、複雑な税制・頻繁な改正、不正行為や救済制度の機能不全などが取り上げられています。
要約すると、
- 多くの国で税の還付を受けようとすると税務調査などかなり手間がかかる
- 税制が複雑で理解しにくい上、頻繁に改正され、国によっては解釈が統一されていない
- 賄賂を授与しないと手続きがすすまなかったり、税の軽減を受けられないことがある
- 課税措置に異議を申し立てるにしても時間と費用が多くかかるか、申立先が税務当局であったりするため適切に審議されないことがある
というような内容です。
興味のある方は一度目をとおすとよいのではないかと思います。
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