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条文の読み方(その2)-「又は」「若しくは」

今回は条文の読み方についての「その2」です。今回取り上げるのは、「又は」「若しくは」です。前回と同様、条文の読み方(法制執務用語研究会)を参考に使用方法を確認していきます。

用途

「又は」、「若しくは」はいずれも複数の語句を選択的に結びつけるときに使用されます。

使用上のルール

  1. 同じレベルの二つの語句を選択的に並べる場合には、「A又はB」のように「又は」を用いる(ルール1)。
  2. 同じレベルの三つ以上の語句を並べる場合には、それぞれの語句を「、」でつないでいき、最後の二つの語句を「又は」でつなぐ(ルール2)。
  3. 体言が並ぶときには、「又は」の前に「、」を打たないが、用言が並ぶときには「又は」の前に「、」をうつ(ルール3)。
  4. 同じレベルの二つ以上の語句とレベルが異なる語句を選択的に並べるときは、一番大きなレベルに一回だけ「又は」を用い、それより小さいレベルには、すべて「若しくは」を用いる(ルール4)。

条文の読み方(その1)-「及び」「並びに」”で書いた「及び」と「並びに」の関係に似ています。

違うのは、「及び」と「並びに」の関係では一番小さいレベルに「及び」が用いられ、それより上位のレベルはすべて「並びに」で接続されるという一番小さいレベルが基準となっているのに対して、「又は」と「若しくは」の関係では、一番大きなレベルで「又は」が用いられ、それよりも小さいレベルではすべて「若しくは」が用いられるというように一番大きな括りが基準となっているという点です。いわばボトムアップなのかトップダウンなのかという方向の違いがあります。

したがって、「若しくは」が登場する条文には、かならず「又は」が含まれているはずということになります。「若しくは」が複数登場し3階層以上になっている場合には、残念ながらどのような構成になっているのかは自分で考えるしかありませんが、2階層までの構成であれば、「又は」と「若しくは」に着目することで条文の構成が理解り易くなります。

使用例

1.ルール1の「又は」
会社法第2条2号
「二  外国会社 外国の法令に準拠して設立された法人その他の外国の団体であって、会社と同種のもの又は会社に類似するものをいう。」

上記では「会社と同種のもの」と「会社に類似するもの」という二つのものを選択的に並べています。

2.ルール2(およびルール3)の「又は」
会社法第2条1号
「一 会社 株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社をいう」

説明するまでもありませんが、上記では、株式会社、合名会社、合資会社、合同会社という四種類の会社を選択的に並べています。

3.ルール3(2階層)の「又は」「若しくは」
会社法第157条2号
「二  株式一株を取得するのと引換えに交付する金銭等の内容及び数若しくは又はこれらの算定方法」

上記では、「数」か「額」などの算定方法という一番大きなレベルのものと、それよりも小さな「数」と「額」を「若しくは」でつないでいます。「及び」も登場していますので「引換えに交付する金銭等の内容」と「数」、「額」、「これらの算定方法」のいずれかを定めなければならないということになります(本文は「次に掲げる事項を定めなければならない」)。

4.ルール3(3階層)の「又は」「若しくは」
3階層のケースは、こんな法律もあるんだなということで条文の読み方(法制執務用語研究会)に取り上げられていた高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律を引用します。

高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律
「第三十条  正当な理由がなく、第十一条第一項の規定による立入調査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は同項の規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をし、若しくは高齢者に答弁をさせず、若しくは虚偽の答弁をさせた者は、三十万円以下の罰金に処する。」

この条文では、「第十一条第一項の規定による立入調査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、」をA、「同項の規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をし、若しくは高齢者に答弁をさせず、若しくは虚偽の答弁をさせた」をBとすると、A「又は」Bというのが一番大きな構造になっています。

前半のAの中は立入調査を「拒み」、「妨げ」、「忌避し」の三つが選択的に並べられており、こちらは二階層どまりです。一方で後半のBの中には「若しくは」が3つ登場します。これは文脈で考えるしかないということになりますが、「同項の規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をし」(自分が答弁する場合)と「高齢者に答弁をさせず、若しくは虚偽の答弁をさせた」(高齢者に答弁させる場合)という括りが選択的に並べられています。

さらに前半の「同項の規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をし」の中に「答弁をせず」と「虚偽の答弁をし」が選択的に並べられており、これが3階層目になっています。後半の「高齢者に答弁をさせず、若しくは虚偽の答弁をさせた」も同様です。

条文の構成が複雑になれば最終的には頭を使って考えなければなりませんが、「又は」と「若しくは」はどちらが大きい括りなのかを知っているのと知らないのでは理解に差が生じるのではないかと思いますので、知っておいて損はありません。

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