「税務署は見ている」-元国税調査官 飯田真弓著
本屋で帯に記載されていた「26年の実務経験を持つ国税調査官が、豊富なエピソードから語る税務調査の実態」に目をひかれ「税務署は見ている」(日経プレミアシリーズ 飯田真弓著)を読みました。
「たちまち大増刷!」ということで、どんなことが書いてあるのだろうと興味津々でしたが、著者が同書の最初の方に書いているとおり「節税対策本ではありません。」また、税務調査に対する裏ワザてきなものが紹介されているわけではありません。
この本の内容を要約すれば、良心にしたがってきちんと納税すれば税務調査は怖くないのできちんと納税しましょう、といった感じの内容です。そのため、グレーな部分をどう考えるかというようなことを期待すると期待外れの内容といえます。
一方で、調査案件の選び方についても触れられており、これは興味深い内容でした。一言でいえば税務署の調査官も暇ではないので、怪しそうな会社が優先的に選ばれるというものです。もちろん、ある程度の課税所得を上げている会社であれば定期的に税務調査に来るというケースもあるようですが、同書で触れられているケースは、ほとんどが何かやっているのでは?という前提で調査に入っているような会社でした。
そのため、著者は調査官時代には「商売人は悪者だ」というくらいの意識をもっていたとのことです。そして「税務署の仕事から離れ、民間の仕事に就いてみると、私の認識は改まりました。今、私のまわりにいらっしゃる経営者の方々は、皆さん、きちんと税金を納めて経営をしていこうという方ばかりです」と述べています。
このような認識をもつくらい、税務調査に入る会社は怪しいと感じる会社が多いということなのではないかと思います。
ちなみに国税庁には国税総合管理システムというものがあって、地域や税目を超えて情報を一元的に管理するシステムがあり、毎年提出される申告書のデータ、調査官が実際に見聞きした情報などがデータとして蓄積されているとのことです。
このシステム上、会社と個人のデータがどの程度リンクしているのかという点までは触れられていませんが、中小企業のオーナー社長が、高額な不動産を購入したとか、あやしげな会社を新たに設立したというようなことも税務調査に影響を与えているのかもしれません。
なお、この本を読んでいる途中で、どこかで読んだことがあるような気がしていましたが、以前”税務調査の調査官に言ってはならない三つのこととは?”というエントリで紹介した「税務弘報」の記事を書いていたのがこの本の著者でした。
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