従業員持株会(その1)-導入割合と奨励金の水準
近年では事業承継対策としても注目されているようですが、今回は従業員持株会についてです。
従業員持株会制度はどれ位の会社で導入されている?
上場を考えた時に従業員持株会を設立する会社もあれば、特に上場の予定がなくとも従業員持株会を設立している会社もありますが、実際にどの程度普及しているものなのでしょうか?
まず上場会社については、東京証券取引所が平成25年10月9日に公表した「平成24年度従業員持株会状況調査結果の概要について」では、平成25年3月末現在の東京証券取引所上場内国会社2,306社のうち、従業員持株会制度2,109社が調査対象となっていることから約91%の上場会社が従業員持株会制度を採用しているということになります。
なお、上記の調査対象は「大和証券、 SMBC日興証券、野村證券、みずほ証券及び三菱UFJモルガン・スタンレー証券の5社のいずれかと事務委託契約を締結している」という条件がついているため、実質的にはもうすこし高い割合となっている可能性があります。
随分前のデータとなりますが、全国証券取引所協議会が1998年まで実施していた調査によれば、上場会社の約96%前後が従業員持株会制度を採用していました。
一方で、非上場会社について統計はみあたりませんが、会社四季報(未上場会社版、2011年上期)に掲載されている情報からすると約4割の会社で従業員持株会が導入されていると推測されるとのことです(新改訂 従業員持株会導入の手引 三菱UFJリサーチ&コンサルティング)。
従業員持株会制度導入のメリット・デメリット
上記のとおり、既に上場している会社の場合、従業員持株会があるのが普通ということになりそうですので、非上場会社でこれから従業員持株会を導入する場合のメリットとデメリットに絞ると、以下のようなものが考えられます。
(1)メリット
①従業員
奨励金や配当金が得られることで財産形成に役立つ
②会社
- 福利厚生の充実を図ることで、人材の確保に寄与する
- 従業員に経営参加意識を持たせることができる
- 株主からの買取請求の受け皿となりうる
- オーナーの相続税対策に役立つ
- 上場後の安定株主として期待できるため資本政策に利用できる(以下上場予定の場合)
- 従業員に上場によるプレミアムを与えることができ、上場への意識統一に寄与する
- 上場後、着実に浮動株を吸収でき、株価形成に役立つ
(2)デメリット
①従業員
会社が倒産すると、資産が失われる。
②会社
未上場時に退会等による換金の申し込みが集中すると株式転売の対応が困難。