循環取引の税務上の取り扱いとは?
T&A master No.560に「循環取引を巡る裁決、税務上の取り扱いはどうなる?」という記事が掲載されていました。
国税不服審判所の裁決事例として公表された循環取引を巡る裁決事例(平成25年9月30日、熊本)の解説記事になりますが、この裁決事例では「循環取引による架空の取引によって得た金員は法人税法22条2項に規定する「無償による資産の譲受け」に該当する」という判断が下されています。
国税不服審判所の裁決要旨検索システム(採決事例集への登載はなし)で検索したところ、裁決要旨は以下のように述べられています。
請求人は、A社から受領した金員(本件各金員)は、A社に対する商品の売上げの対価であるから受贈益ではない旨主張する。しかしながら、本件各金員は、請求人のB社に対する買掛金の支払に充てるために行われた循環取引により、請求人がB社からA社等を経由して得たものである。したがって、本件各金員は、請求人が架空の売上取引によって得た金員であり、法人税法第22条《各事業年度の所得の金額の計算》第2項に規定する「無償による資産の譲受け」に該当することから、請求人の所得の金額の計算上益金の額に算入すべきものと認められる。(平25. 9.30 熊裁(法)平25-3)
請求人は、A社に対する商品の売却取引(本件各売上取引)は、請求人の仕入先であるB社の紹介によって行った正当な取引であり、また、本件各売上取引の売上分をA社から買い戻した仕入取引(本件仕入取引)も正当な取引である旨主張する。しかしながら、①B社の社内調査報告書(本件報告書)には、同社が請求人に対する売掛金(本件売掛金)を回収するために、A社等を経由して請求人に資金(本件各金員)を回し、本件各金員により本件売掛金を回収したという循環取引(本件循環取引)の詳細が記載されており、本件報告書は、同社の代表取締役等の主要な役員及び弁護士等の社外委員を構成員とした社内調査委員会による調査結果として公表されたこと、②請求人をはじめ本件循環取引に関係した各社の担当者も、本件循環取引が行われたことを否定しない答述等を行っていること、及び③実際にA社から請求人に本件各金員が支払われ、請求人は本件各金員を本件売掛金の支払に充てていること等からすると、本件報告書の記載内容は信用することができ、本件循環取引は本件売掛金を回収するために行われた架空取引であると認められるから、本件各売上取引も架空取引と認められる。また、本件仕入取引も、架空の売上げに見合う額を仕入れたように仮装した、架空の取引と認められる。(平25. 9.30 熊裁(法)平25-3)
典型的な循環取引であるとすると①の売掛金から架空販売で、ぐるりと一周してB社の在庫が各社の利益分だけ膨れ上がるということになりますが、裁決要旨では請求人はA社への販売分をA社から仕入として買い戻しているようなので、単純にぐるりと一周しているという感じではないようです。
請求人からB社へは売掛金の支払いがなされているということですので、A社から請求人に支払われた代金は最終的に簿外で処理され、B社への売掛金の支払いに充てられたということでしょうか・・・
このように考えると、請求人とA社との間では同額の売上と仕入で債権債務が0となっているところで、A社から請求人に支払われた資金は「無償による資産の譲受け」だというのも納得できます。
ただし、この場合、A社にはB社に対する売上だけが残ってしまうので、法人税負担が生じるという問題がありますが、A社が課税所得が生じていない会社であるか繰越欠損金がある会社であれば税負担も生じないということになります。
裁決要旨からの情報のみでは釈然としない部分も残りますが、このような循環取引は重加算や青色申告の取り消しにもつながるということも理解しておく必要があります。
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