連結会計基準等の改正(その5)-一部売却により連結から持分法になった場合
随分間隔が空きましたが、連結会計基準等の改正について、今回は一部売却により連結から持分法適用会社になった場合の処理について確認します。
一部売却により連結から持分法になったケースとしては改正資本連結実務指針に設例5(60%→80%→30%)および設例6(80%→60%→30%)がありますが、まずは、もっとシンプルな設例で処理方法を確認することとします。
1.S社修正仕訳
2.開始仕訳
繰越利益剰余金 1,000 非支配株主持分*2 1,400
評価差額 1,000
のれん*1 200
*1 5,800-(5,000+1,000+1,000)×80%=200
*2 (5,000+1,000+1,000)×20%=1,400
3.非支配株主に帰属する当期利益の計上
/貸)非支配株主持分 100
当期利益500×20%
4.開始仕訳の戻し
非支配持分 1,400 繰越利益剰余金1,000
評価差額1,000
のれん200
連結対象から持分法対象となりS社のBSが合算されなくなるため、開始仕訳を振り戻します。
5.BS除外仕訳
資本金5,000
利益剰余金(期首残高)1,000
利益剰余金(連結除外) 500
X2年3月期にはPLのみ連結されるため、S社のBSを除外する仕訳(S社BSの反対仕訳)を行います。
また、評価差額についてもS社BSが連結されないため以下の振り戻し仕訳が必要となります。
借) 評価差額 1,000 貸)土地 1,000
6.持分法移行仕訳
連結除外年度までに計上されたS社の当期純利益を取得後剰余金として計上し、そのうち売却前の親会社持分額を投資の修正としてS社株式に加算する。
借)S社株式 400 貸)利益剰余金(連結除外) 500
非支配持分 100
このケースでの取得後剰余金はX2年3月期の利益のみであるので、500×80%(売却前持分)=400がS社株式に加算される金額となります。
また、持分法適用会社になったことにより、非支配持分を振り戻す必要があります。
X2年3月期の非支配持分に対する利益の振替とセットで考えると、取得後剰余金400分だけS株が増加するという結果となります。
7.S社株式売却損益の修正
S社株式の投資の修正額(400)のうち、売却持分に対応する部分を株式売却損益から控除する。
借)株式売却益 250 貸)S社株式 250
さて、ここが少しややこしい部分です。この設例は「連結財務諸表の実務(第6版)」(あずさ監査法人)から金額を1/10にして作成していますが、同書では、調整する株式売却益の金額を「400×50%/80%=250」として算出する方法が示されています。
調整される金額を、S社株式の増加額として処理される金額×売却持分割合/売却前持分割合で計算できるというのは直感的に理解しやすいですが、基本的にはこのように計算することはできません。
では、どのように計算するかですが実務指針66-5項により以下のように算出することになります。
売却分の株式に対応する投資の修正額は以下の差額で算定する。
- 売却前の投資の修正額として、取得後利益剰余金及びその他の包括利益累計額並びにのれん償却累計額のみならず、支配継続中に生じた親会社の持分変動による差額(資本剰余金)を含めて算定した金額
- 売却後の投資の修正額として、持分法による投資評価額(関連会社の資本に対する持分比率に対応する額及びのれんの未償却額)と個別財務諸表上の帳簿価額(付随費用を除く。)の差額として算定した金額
今回の設例を上記に当てはめると以下のようになります。
{(5,000+1,500+1,000)×50%+200(のれんの未償却残)×50%/80%}-3,625(個別財務諸表の簿価 5,800×50%/80%)=250
ポイントは「200(のれんの未償却残)×50%/80%」という部分です。今回のケースでは、追加取得等が行われていないこととから「400×50%/80%=250」として算出することも出来ましたが、例えば60%から80%に追加取得をした後に50%を売却したというようなケースでは結果が異なります。
この点については次回以降に実務指針の設例を使って確認することとします。
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