改正会社法(その7)-資金調達関連の改正
今回は改正会社法(その7)として資金調達に関連する改正内容を確認します。
1.支配株主の異動を伴う募集株主の割当て等
改正会社法では、公開会社が募集株式の割当て等を行い、それにより支配株主が異動する場合には、会社は、株主へ事前の通知・公告等を行わなければならなくなりました(改正会社法206条の2第1項~3項)。
ここでいう「募集株式の割当て等」とは、「現行会社法204条1項により株式会社が申込者の中から募集株式の割当てを受けるものを定めた場合および現行会社法205条により募集株式を引き受けようとするものがその総数の引受けを行う契約(総数引受契約)を締結する場合」(「ここが変わった改正会社法の要点がわかる本」三原秀哲 著)を意味します。
現行会社法においては、支配株主が異動するか否かにかかわりなく、有利発行となる場合を除き、公開会社は取締役会の決議によって、その募集株式の発行等を決定することができます(会社法201条1項、199条1項・3項)。
また、現行会社法では、支配株主が異動するような場合においても、取締役会決議によって第三者割当増資を行うことが可能であり、これにより不透明な第三者割当増資が問題となる事例も増加していたといわれています。
そのため、冒頭のとおり公開会社においては、支配株主に異動が生じる「募集株式の割当て等」を実施する場合、株主への事前の通知・公告等が必要とされました。
通知・公告等を行った結果、総株主の議決権の10分の1以上の議決権を有する株主が、募集株式の引受けに反対する旨を公開会社に通知したときは、株主総会の承認を得ることが必要となります(改正会社法206条の2第3項)。
また、募集新株予約権の割当て等についても、募集株式の割当て等と同様の改正が行われていますが詳細は割愛します。
2.募集株式等の仮装払込みの責任
改正会社法では金銭出資の払込みが仮装された場合、募集株式の引受人は、株式会社に対し、払込みを仮装した払込金額の全額の支払い義務を負担することとされました(改正会社法213条の2第1項1号)。
また、募集株式の引受人による出資の履行の仮装に関与した取締役として法務省令で定める者は、株式会社に対して、上記の募集株式の引受人と同様の責任を負うこととされました(改正会社法213条の3第1項本文)。
商法を勉強していた者としては現行会社法も同じじゃないの?と思ってしまいましたが、現行会社法では旧商法で定められていた以下の責任は定められていませんでした。
では現行会社ではどのような取り扱いになっているのかですが、会社法としては、見せ金等による仮装払込みが行われた場合、単に無効な払込みとして募集株式の引受人が失権することになるにすぎません。
ただし、仮装払込みを行った者は無効な仮装払込みによって、商業登記簿の原本である電磁的記録に増資記録をさせたことになるため、電磁的公正証書原本不実記載・行使罪という刑事罰の対象となるとのことです。
そもそも商法から会社法への改正にあたって、何故取締役の引受担保責任がなくなったのかですが、これは「取締役が募集株式の発行等につき所定の手続きを経ることなく株式を引き受けることは適切ではない」とされたことによるものです。
そのため、今回の会社法改正で定めれた責任は、「旧商法における取締役の引受担保責任を法的に復活させたものではなく、特別の法定責任と構成」されています。
なお、仮装に関与した取締役等のうち仮装の払込みをした取締役等以外のものは、その職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合には、その責任を負わないとされています(改正会社法213条の3第1項但し書)。一方で、仮装の払込みをした取締役等は、無過失責任を負うことになります(同条同項ただし書カッコ書)。
新株予約権に係る仮装払込みや設立時の仮装払込みについても、改正がなされていますが詳細は割愛します。
日々成長