伝え方が9割だとすると結果は変わっていたのか?
少し前に「伝え方が9割」という書籍が話題となりましたが、今回のイスラム国の件では、まさに伝え方が問題だったのかもしれないと感じました。
今回の事件の発端となったとされる2015年1月17日に安部首相がエジプトで実施した演説の全文は、首相官邸のHPに掲載されています。
一部を抜粋すると、以下のようになっています。
2年前、私の政府はこの考えに立って、中東全体に向けた22億ドルの支援を約束し、これまでにすべて、実行に移しました。本日この場で皆様にご報告できることは、私にとって大きな喜びです。
「中庸が最善」の精神に裏打ちされた、活力に満ち、中東地域の人々が安心して暮らせる、安定した中東を取り戻すこと。日本の協力は、まさしくそのためにあります。エジプトの皆様、中東の人々に、知ってほしいと願わずにはいられません。
社会に安定を取り戻し、成長への道筋を確かにできたとき、エジプトを始め中東は、潜在力を爆発させるでしょう。そこへ向け努力する皆様にとり、日本は、常に変わらぬ伴走者でありたいと願います。
ここで私は再び、お約束します。日本政府は、中東全体を視野に入れ、人道支援、インフラ整備など非軍事の分野で、25億ドル相当の支援を、新たに実施いたします。(中略)
その目的のため、私が明日からしようとしていることをお聞き下さい。
まず私はアンマンで、激動する情勢の最前線に立つヨルダン政府に対し、変わらぬ支援を表明します。国王アブドゥッラー二世には、宗教間の融和に対するご努力に、心から敬意を表すつもりです。
パレスチナでは、保健医療、水道整備や西岸とガザの難民支援など、民生安定に役立つ施策を明らかにします。
イラク、シリアの難民・避難民支援、トルコ、レバノンへの支援をするのは、ISILがもたらす脅威を少しでも食い止めるためです。地道な人材開発、インフラ整備を含め、ISILと闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します。
今回の事件は、安倍首相がエジプトで余計な演説を行ったからだという意見も聞かれ、それに対して自民党の議員などからは人道的支援として支出するということを明確に言っているのでそれは問題ではないというような反論が聞かれます。
確かに、「日本政府は、中東全体を視野に入れ、人道支援、インフラ整備など非軍事の分野で、25億ドル相当の支援を、新たに実施いたします。」と言っており、問題となった2億ドルは非軍事の分野の支援25億ドルの一部であるとの主張も理解できます。
しかしながら、国語の試験ならいざしらず、過激派組織が好意的に前後の文脈を正しく理解してくれると期待するのも無理があるのではないかという気がします。
「イラク、シリアの難民・避難民支援、トルコ、レバノンへの支援をするのは、ISILがもたらす脅威を少しでも食い止めるためです。地道な人材開発、インフラ整備を含め、ISILと闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します。」という部分だけがクローズアップされて理解される可能性も考えるべきだったのではないかという気がします。
首相官邸のHPで公開されている上記の部分の英訳は「We are also going to support Turkey and Lebanon. All that, we shall do to help curb the threat ISIL poses. I will pledge assistance of a total of about 200 million U.S. dollars for those countries contending with ISIL, to help build their human capacities, infrastructure, and so on.」となっています。
この部分で「闘う」という表現の見直しや、この文中に「人道的支援として」という表現があったらとしたらどうなっていたのか?
何を言っても同様の事件が起きたという可能性ももちろんありますが、伝え方の重要性を改めて考えた一件でした。
日々成長