平成27年度税制改正による税効果の注記例-1月・2月決算は決算日前後の変更双方が必要
平成27年3月31日に税制改正が公布されたことにより、3月決算会社では税率変更の処理が必要となり、税率の変更により繰延税金資産及び繰延税金負債の金額が修正されたときは、その旨及び修正額を注記する必要がある旨は記載しましたが、実際の注記はプロネクサスの記載例によると以下のような感じになるようです。
なお、税率については第 307 回 企業会計基準委員会議事で述べられている税率となっています。
3.法人税等の税率の変更による繰延税金資産及び繰延税金負債の金額の修正
「所得税法等の一部を改正する法律」(平成27年法律第9号)及び「地方税法等の一部を改正する法律」(平成27年法律第2号)が平成27年3月31日に公布され、平成27年4月1日以後に開始する事業年度から法人税率等の引下げ等が行われることとなりました。これに伴い、繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に使用する法定実効税率は従来
の35.6%から平成27年4月1日に開始する事業年度に解消が見込まれる一時差異については33.1%に、平成28年4月1日に開始する事業年度以降に解消が見込まれる一時差異については、32.3%となります。
この税率変更により、繰延税金資産の金額(繰延税金負債の金額を控除した金額)はXX百万円減少し、法人税等調整額がXX百万円、その他有価証券評価差額金がXX百万円、繰延ヘッジ損益がX百万円、それぞれ増加しております。
3月決算会社の場合は上記となりますが、1月決算または2月決算の会社の場合、有価証券報告書の提出は通常4月後半以降となりますので、決算日後に税率の変更が公布されたケースに該当し、税率の変更の内容及びその影響を注記する必要があるということになります。
1月決算および2月決算会社では、復興特別法人税が廃止されたのが当期(平成27年1月期ないし2月期)中の出来事ということになりますので、それに伴う「法人税等の税率の変更による繰延税金資産及び繰延税金負債の金額の修正」の注記をした上で、さらに「決算日後の法人税等の税率の変更」の注記が必要となるということになります。
面倒ではありますが、致し方ないと諦めるしかなさそうです。
1月決算の事例を検索してみると1月20日決算の会社など6社が既に有価証券報告書を提出していました。
1.ダイドードリンコ株式会社(平成27年1月20日決算)
「所得税法等の一部を改正する法律」(平成26年法律第10号)が平成26年3月31日に公布され、平成26年4月1日以後に開始する連結会計年度から復興特別法人税が課されないこととなりました。これに伴い、繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に使用する法定実効税率は、平成27年2月1日に開始する連結会計年度に解消が見込まれる一時差異については、従来の37.8%から35.5%となりました。
なお、これによる当連結会計年度に与える影響はありません。
4.決算日後の法人税等の税率の変更
「所得税法等の一部を改正する法律」(平成27年法律第9号)及び「地方税法等の一部を改正する法律」(平成27年法律第2号)が平成27年3月31日に公布され、平成27年4月1日以降に開始する連結会計年度から法人税率が変更されることとなりました。これに伴い、繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に使用される法定実効税率は、平成28年2月1日に開始する連結会計年度に解消が見込まれる一時差異については、35.5%から32.9%に、平成29年2月1日以降に開始する連結会計年度に解消が見込まれる一時差異については、32.1%に変更されます。
なお、この税率変更による影響は軽微であります。
「法人税等の税率の変更による繰延税金資産及び繰延税金負債の金額の修正」部分については問題とならないと思いますので、以下「決算日後の法人税等の税率の変更」部分だけあと2社紹介します。
2.株式会社三井ハイテック(平成27年1月31日決算)
「所得税法等の一部を改正する法律」(平成27年法律第9号)が平成27年3月31日に公布され、平成27年4月1日以後に開始する連結会計年度から法人税の引下げ等が行われることになりました。これに伴い、繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に使用する法定実効税率は従来の35.3%から、平成28年2月1日に開始する連結会計年度に解消が見込まれる一時差異について32.8%に、平成29年2月1日に開始する連結会計年度に解消が見込まれる一時差異については32.0%となります。
この税率変更による連結財務諸表に与える影響は軽微であります。
3.ピープル株式会社(平成27年1月20日決算)
「所得税法等の一部を改正する法律」(平成27年法律第9号)が、平成27年3月31日に公布され、平成27年4月1日以降に開始する事業年度より法人税率が変更されることになりました。また、「地方税法等の一部を改正する法律」(平成27年法律第2号)が平成27年3月31日に、「東京都都税条例及び東京都都税条例の一部を改正する条例の一部を改正する条例」(平成27年東京都条例第93号)が平成27年4月1日にそれぞれ公布され、平成27年4月1日以降に開始する事業年度から事業税率が変更されることになりました。これに伴い、繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に使用する法定実効税率は、平成28年1月21日から平成29年1月20日までに解消が見込まれる一時差異については従来の35.64%から33.06%に、平成29年1月21日以降に開始する事業年度に解消が見込まれる一時差異については従来の35.64%から32.30%になっております。
この税率変更による財務諸表に与える影響は軽微であります。
なお、現時点で確認できた6社のうち、株式会社シーイーシー(平成27年1月31日決算)では、平成27年度税制改正の影響が以下のように「法人税等の税率の変更による繰延税金資産および繰延税金負債の金額の修正」として注記されています。
株式会社シーイーシー(平成27年1月31日決算)
どう会計処理したのかは定かではありませんが、なかなか興味深い事例ですね。
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