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勤務税理士の賠償責任を認めた訴訟が決着

T&A masterのNo.591(4月20日号)に「勤務税理士の賠償責任を認めた税賠事件が決着」という記事が掲載されていました。

この事案は、平成20年3月に生じた相続における債務控除の処理誤りに関する税賠訴訟でした。当時の相続税法では、外国籍かつ国外に住所がある相続人は制限納税義務者に該当し、相続債務に係る債務控除が大きく制限されていましたが、本来計上することができない債務控除を計上したことで相続税・延滞税・加算税が発生し、訴訟となったようです。

地裁判決時の記事(No.544)によれば、相続人である納税者は米国に帰化して、相続発生時には日本国籍を失っていましたが、”相続税の申告実務を行っていた勤務税理士は、納税者側から「納税者は米国の国籍を取得したが日本国籍を放棄していないため二重国籍である」旨の回答を受けたことなどから、制限納税義務者には該当しないと判断”したとのことです。

地裁は、”申告事務を行っていた勤務税理士が納税者側から「納税者は米国の国籍を取得した」旨の回答を受けた時点で、制限納税義務者であるとの疑いを持つに足りる事実を認識したといえる”とし、”国籍法の規定を確認せず、どのような場合に日本国籍が失われるか(国籍法11条1項は、自己の志望により外国の国籍を取得したときは日本の国籍を失う旨を規定)を認識しなかった点について、税理士としての注意義務に違反した”と判断して、会計事務所の所長と勤務税理士にそれぞれ約1000万円の損害賠償を命ずる判決を下しました。

その後、高裁での争いを経て、最高裁に持ち込まれましたが、最高裁では上告棄却および上告受理申立を受理しないことが決定され、税理士側の敗訴で決着しました。

この事案では、会計事務所の所長だけではなく、勤務税理士に対して賠償責任が命じられたという点で勤務税理士であってもリスクがあるという点を浮き彫りにしました。

高裁の判決では、勤務税理士は税理士という公的資格に基づいて相続税申告に関与しており、所長税理士の単なる手足というべきではないため、勤務税理士が個人責任を負うこともやむを得ないと指摘されています。

この考え方を会計士に当てはめてみると、現場で単なる手足というべきスタッフも多いですが、パートナーではなくても公的資格に基づいて会計監査に関与しており、所長税理士の単なる手足というべきではない会計士もいるのかもしれませんね。

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