トヨタ自動車の株主総会発行が可決された新型株式とは?
本日開催されたトヨタ自動車の株主総会で、新型の株式発行が可決されたとのことです。
今回発行が可決された株式は、「AA型種類株式」なるもので、第1回AA型種類株式として3000万株~5000万株の発行が予定されています。
発行条件は、平成27年7月2日~7月7日の間に決定されるとのことですが、同社が開示している説明資料によると発行価格は「発行価格等決定日の普通株式の終値×126%~130%」になるとのことです。
この種類株式は、配当優先株的ではありますが、議決権も付与されているという点に特徴があります。同社の説明資料では、「普通株主の皆様に配慮しつつ、中長期的な視点で当社の株主となり、議決権を行使いただける方々に合わせた株式です」と説明されています。
議決権が付与されているという点も面白いですが、配当率が1年ごとに0.5%ずつ増加していくという商品になっている点も面白い点です。配当率は以下のとおりです。
(出典:「第1回AA型種類株式に関するご説明資料」)
同社の平成27年3月期の年間配当額は1株当たり200円(前期は165円)、平成27年3月末の株価は8,383年でしたので、期末時価に対する配当率は約2.4%となっています。
普通株式と比較すると、平成27年度の配当年率0.50%はそれほど魅力的ではありません。が、5年間保有すると配当率は2.5%となり、それ以降は2.5%が継続するとのことです。また、定期預金の利率などを考えると初年度の0.5%でも十分という考え方もあり得ます。
ただし、この種類株式は譲渡制限が付されているので、投下資本の回収手段が制限されます。投下資本の回収手段として、平成32年9月以降は、普通株式への転換又は発行価格での取得請求が認められています。
つまり、株主の立場からすると、平成32年9月以降に発行価格以上に普通株式の株価が上昇していれば、普通株式へ転換を選択し、普通株式が発行価格以下であれば発行価格での取得を請求できるということになります。
なんだかとても株主にお得な感じがしますが、そんなに甘くはありません。
まず、そもそも発行価格は普通株式の時価の126%~130%とされていますので、約5年度に同社の株が今よりも少なくとも約30%以上上昇しなければ、普通株式に転換することによるメリットは生じません。現在の株価を前提とすると1株1万1千円程度にならないと、普通株式に転換するうまみはありません。
ちなみに過去10年の同社の株価の推移は以下の通りです。近年右肩あがりの株価を示していますが、どこまで上昇を見込むかというのが問題となりそうです。
(出典:Yahooファイナンス)
一方で、仮に株価が低迷したとしても長期的に保有していれば、当初発行価格×2.5%の配当が約束されているので、現在の金利水準および同社の安定性を前提とするとおいしい商品のようにも思えます。
ですが、同社の説明資料には以下の記載があります。
(出典:「第1回AA型種類株式に関するご説明資料」)
上記の「会社による金銭対価の取得条項」については、特に説明がなされていないようですが、開始は平成33年4月より年4回となっています。
この種類株式に一般的に考えられる取得条項が付されているとすると、株主にとって配当利回りが有利に感じる状況になると、取得条項の行使により株式を取得されてしまうというのではないかと考えられます。ようやく2.5%の水準になったと思ったら、取得条項により買い取られれてしまったということもあり得るのではないかと思います。
というわけで、面白い商品ではありますが、応募するかどうかはよく考える必要がありそうです。また、法人での取得も特に制限されていないようですが、仮に法人で取得した場合、時価評価等がどうなるのかもよく考えておく必要がありそうです。
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