馬券収入-最高裁判決以上の利益をあげるも雑所得と認められず
意外に競馬で儲けている人がいるのだなと感心してしまう事案がT&A master No.605に掲載されていました。
少し前に最高裁判決で、外れ馬券の購入費用が必要経費として認められ、その判決を受けて所得税基本通達34-1が以下のように改正されました。
34-1 次に掲げるようなものに係る所得は、一時所得に該当する。(昭49直所2-23、昭55直所3-19、直法6-8、平11課所4-1、平17課個2-23、課資3-5、課法8-6、課審4-113、平18課個2-18、課資3-10、課審4-114、平23課個2-33、課法9-9、課審4-46、平27課個2-8、課審5-9改正)
(1) 懸賞の賞金品、福引の当選金品等(業務に関して受けるものを除く。)
(2) 競馬の馬券の払戻金、競輪の車券の払戻金等(営利を目的とする継続的行為から生じたものを除く。)
(注)
1 馬券を自動的に購入するソフトウエアを使用して独自の条件設定と計算式に基づいてインターネットを介して長期間にわたり多数回かつ頻繁に個々の馬券の的中に着目しない網羅的な購入をして当たり馬券の払戻金を得ることにより多額の利益を恒常的に上げ、一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有することが客観的に明らかである場合の競馬の馬券の払戻金に係る所得は、営利を目的とする継続的行為から生じた所得として雑所得に該当する。
2 上記(注)1以外の場合の競馬の馬券の払戻金に係る所得は、一時所得に該当することに留意する。(以下省略)
今回取り上げられていた事案では、最高裁での事案以上の利益を上げていたものの結果的に雑所得としては認められませんでした。
同誌の記事によると、平成17年から平成22年にかけて購入した馬券の総額は、なんと約72億7000万円(最高裁判決の事案は約28億7000万円)でした。そして、あげた利益は5年間で総額5億7000万円(最高裁判決の事案は約1億4000万円)とのことです。
各年の利益は、少ない年で約5500万円、最高で年間約2億円となっています。この納税者がどのように馬券を購入していたのかですが、この点については「テレビや新聞などから集めた情報をもとに競走馬について絶対評価を行ったうえで、レースごとに8つの考慮要素(馬の能力など)に基づいた評価を行った後にレースの結果を予想して、どのような馬券を購入するのかを個別に判断して馬券を購入」していたとのことです。
最高裁判決の事案が、「インターネットを介して長期間にわたり多数回かつ頻繁に個々の馬券の的中に注目せず網羅的な購入方法で馬券を購入」していたのに対して、上記の事案では、「どのような馬券を購入するのかを個別に判断して」いたという違いがあります。
「具体的な馬券の購入履歴などの保存がない」ことも一時所得と判断される要因の一つとなったようですが、「本件納税者が主張する馬券の購入態様は、規模の点を別にすれば一般的な競馬愛好家による馬券購入の態様と大きな差があるとは認められない」という判断が下されています。
たしかに、上記の通達では、「インターネットを介して長期間にわたり多数回かつ頻繁に個々の馬券の的中に着目しない網羅的な購入をして当たり馬券の払戻金を得ることにより多額の利益を恒常的に上げ」ていることが雑所得として認められるためには必要とされていますので、致し方ないというところでしょうか。
この才能、株で発揮できれば、超売れっ子アナリストになれるのですが・・・
日々成長