役員退職給与の算定方法は平均功績倍率が最も合理的
T&A master No.632に「役員退職給与の算定方法は平均功績倍率が最も合理的」という記事で未公開の裁決事例が紹介されていました。
1.基礎事実等
この事案では、死亡退職した代表取締役に支給した役員退職給与に不相当に高額な部分があるものとして、支給額の一部を不算入とする課税決定処分が行われたことについて争われた事案です。
当該代表取締役は昭和56年10月20日に取締役に、平成15年10月20日に代表取締役に就任し、死亡退職しました。役員在任期間は27年(端数切り上げ)で、最終報酬月額は240万円でした。
会社は役員退職慰労金規定に基づき、臨時株主総会決議を経て支給された退職慰労金は4億2000万でした。
なお、この金額は最終報酬月額に役員在任期間27年、役員倍数5倍、功労加算1.3倍を乗じて算定されたものとなっています。
これに対して税務当局は、退職給与として相当であると認められる金額を217,080,000円と算定し、これを超過する202,920,000円は法人税法34条2項に規定する不相当に高額な部分の金額にあたるため損金算入できないとして更正処分等を行いました。
2.審判所の判断
審判所は「不相当に高額な部分の金額」を含むか否かを判断するためには、当該退職役員がその法人の業務に従事した期間及びその退職の事情を考慮するとともに、同業類似法人の役員に対する退職給与の支給の状況等と比較して検討するのが相当であるとしましした。
審判所の主な認定事実は以下のとおりです。
そして、まず平均功績倍率法を用いた算定が合理的か否かについて、同業類似法人における功績倍率の平均値を算定することにより、同業類似法人間に通常存在する諸要素の差異やその個々の特殊性が捨象され、より平準化された数値が得られるものであるといえることから、最終報酬月額、勤続年数及び平均功績倍率を用いて役員退職給与の適正額を算定する平均功績倍率法は、類似法人の抽出が合理的に行われる限り、法人税法第34条第2項及び法人税法施行令第70条第2号の趣旨に最も合致する合理的な方法としました。