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新株予約権の放棄と登記

ストック・オプションでは、権利行使条件として新株予約権者(従業員等)が会社を退職した場合には権利行使ができない旨が定められてることが多いと考えられます。

この場合、従業員等が会社を退職した場合、その新株予約権はどうなるのか、登記との関係はどうなるのかについての確認です。

1.新株予約権の消却

新株予約権の消却と消滅はいずれも権利がなくなるという点では共通ですが、新株予約権の消却という手続きが存在するため、新株予約権の消却と消滅の関係が直感的に理解しにくいとも考えられます。

まず、新株予約権の消却は、会社法上、自己新株予約権についてのみ可能な手続きとなっています(会社法276条)。

第二百七十六条 株式会社は、自己新株予約権を消却することができる。この場合においては、消却する自己新株予約権の内容及び数を定めなければならない。

したがって、新株予約権発行会社以外の新株予約権者が有する新株予約権が「消却」の手続きによって消滅することはありません。

2.新株予約権の消滅

では、会社を退職した場合には権利行使ができないとされているようなケースにおいて、会社がその者から新株予約権を取得して消却しない限り、付与された新株予約権は存在し続けるのかですが、この点については会社法上以下のように権利の消滅が定められています。

第二百八十七条 第二百七十六条第一項の場合のほか、新株予約権者がその有する新株予約権を行使することができなくなったときは、当該新株予約権は、消滅する。

これは、「行使できなくなった新株予約権を存続させておく必要に乏しく、また、取得や消却の手続のためコストがかかったり、取得や消却の手続をとらずに放置された場合の権利関係が不明確であるため、行使することができなくなった新株予約権は消滅するものしたもの」です(「新株予約権ハンドブック 第3版」 太田洋・山本憲光・柴田寛子代表編集 商事法務)。

そのため、一時的に権利行使できない状況の新株予約権を消滅させることは上記の趣旨に反するので、権利行使期間を経過してしまった新株予約権のように今後一切権利行使することができなくなった場合に消滅の規定を適用すべきとされています。

では、権利行使条件として新株予約権者(従業員等)が会社を退職した場合には権利行使ができない旨が定められている場合はどうなるかですが、この点については、「一般的には退職をしたらその後は一切権利行使できなくなるものと解されようが、再度同じ会社に就職した場合や、退職していない者に譲渡した場合には行使することができるとされているような場合には、その後新株予約権が行使できなくなったとはいえないので、新株予約権は消滅しないものと解すべきであろう」(同上)と述べられています。

ストック・オプションの場合、行使条件の定め方によっては、復職すれば権利行使できると読める場合もあるかと思いますが、そのような場合であっても権利放棄の書面を入手しておけば権利行使不可により消滅と考えられるのではないかと思います。

3.新株予約権の放棄と登記

新株予約権が放棄された場合の登記について、「商業登記ハンドブック 第3版(松井信憲 著)では以下のように述べられています。

「新株予約権も財産権であるから、従来から、新株予約権者は、会社に対する権利の放棄の意思表示によって新株予約権を放棄することができ、これにより、新株予約権は消滅すると解されている。
 なお、本書では、新株予約権の放棄による消滅を会社法287条とは別に論ずるが、同条の適用場面の一つと見る考え方もあり得るであろう。」

したがって、同書では登記の事由を「新株予約権の放棄」とした登記申請書の例も記載されていますが、上記からすると登記の事由を「新株予約権の消滅」とすることもあるようです。

なお、新株予約権の消滅と捉えた場合、「新株予約権の消滅の日から2週間以内に、新株予約権の変更の登記をしなければならない」うえ、「ストック・オプション目的の新株予約権につき、従業員の退職等の事由が異なる日に生じた場合でも、会社法915条2項又は3項に相当する規定がないので、各原因年月日ごとに変更登記が必要と解さざるを得ない」とのことなので、退職率が高かったりすると登記手続が面倒となります。

上記参考書籍では、新株予約権の消滅の登記は上記の登記期間の記載がある一方で、新株予約権の放棄の登記手続では登記期間が特に述べられていません。消滅も放棄も登録免許税は申請1件につき3万円とされていますが、放棄の場合はある程度まとめて登記を行うことが認められるということであるならば、放棄の方が使い勝手がよいということなのかもしれません。

ここは司法書士さんに確認してみようと思います。

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