年金資産の内訳作成時の留意事項(金融庁より)
平成27年度の有価証券報告書レビューの結果を受けて、金融庁より有価証券報告書作成上の留意点が公表されています。平成27年度は重点テーマの一つが退職給付でした。その審査結果の一つに以下のようなものがあります。
「年金資産の主な内訳」において、その内訳を具体的に記載しないで「その他」に含めることにより、「その他」の割合が過大となっている事例や、「オルタナティブ」として記載している資産に、性質やリスクの異なる重要な資産を含めているにもかかわらず、その旨の説明を行っていない事例
年金資産の主な内訳の記載として、宝印刷の記載例では「債券」・「株式」・「現金及び預金」・「その他」というような区分で記載例が作成されていますが、特に運用額が大きくないうな場合は、債券や株式という区分ではなく合同運用が利用されていたり、運用収益を改善しようと上記で述べられている「オルタナティブ」が利用されることも多いようです。
そもそも、「オルタナティブ」投資とはなんぞや?ですが、SMBC日興證券の「初めてでもわかりやすい用語集」では以下のように説明されています。
オルタナティブ投資とは、上場株式や債券といった伝統的資産と呼ばれるもの以外の新しい投資対象や投資手法のことをいいます。オルタナティブ(alternative)は直訳すると「代わりの」「代替の」という意味です。
具体的な投資対象としては、農産物・鉱物、不動産などの商品、未公開株や金融技術が駆使された先物、オプション、スワップなどの取引が挙げられます。
なんとなく怪しげなものというイメージをもってしまう「オルタナティブ」ですが、上記のとおり様々なタイプの物が含まれるところ、それを「オルタナティブ」として一括りにしてしまうことがけしからんということのようです。
アコム㈱の2015年3月期の有価証券報告書では以下のような開示がなされており、このような開示は改善の余地があるということだと考えられます。2016年3月期の有価証券報告書でどのような開示がなされるのかに注目です。
内容が開示されているものでは、例えば東芝プラントシステム(株)の2015年3月期の有価証券報告書では以下のように脚注に付記するという開示がなされています。それぞれの割合は全くわかりませんが、このような開示とすることは考えられます。
さらにエイベックス・グループ・ホールディングス㈱の2015年3月期の有価証券報告書では以下のような開示がなされています。
「ファンド」がどのようなファンドなのかについては触れられておらず説明になっていないような気はするものの、何かを書かなければならないとした場合の逃げ道の一つとしては使えるかもしれません。
一方で「その他」の割合が過大というのは、どの程度のことをいうのかは定かではありませんが、めずらしい事例としては2015年10月期の㈱TASAKIの以下のようなものがあります。
素直に「合同運用」と記載すればよいのでは?という気がしますが、あくまで「株式」や「債券」ではないという意味で上記のような表記になっているのかもしれません。
最後に「その他」の割合が大きいと思われる事例としては㈱第三銀行の事例があります。
「債券」・「株式」・「現金及び預金」・「その他」という標準的な4区分で「その他」が約30%となっています。これが金融庁のいうところの「過大」な割合に当たるのかは定かではありませんが、財務諸表本表の独立掲記の基準からすると大きいとはいえそうです。上記のアコムと並び2016年3月期の有価証券報告書でどのような開示がなされるのかについて注目です。
「その他」の割合が大きくならないように注意しましょう。
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