法人税法上の役員報酬の取扱い(その1)-定義・みなし役員など
今回は役員報酬の税務上の取扱いについて確認します。平成28年税制改正によって、利益連動給与の算定指標等についても見直しが図られていたり、リストリクテッド・ストックが事前確定届出給与の範囲に含まれることとなったりと改正が図られていますが、とりあえず基本的な部分から確認していくことにします。
役員報酬は原則損金不算入?
役員報酬について法人税法上の取扱いが大きく変化したのは平成18年度で、およそ10年前ということになります。平成18年度の改正によって、役員報酬がその職務執行前にあらかじめ支給時期・支給額が定められていたものに基づくか否かによって損金算入の可否が判断されることとなり、定期同額給与、事前確定届出給与、利益連動給与という三つの損金算入可能な報酬形態が規定されました。
個人的なには、役員報酬は原則として損金不算入という位置づけにあるのではないかと感じてしまいますが、調べてみるとこの点については平成18年度の改正時にも同様に感じている方が多かったようです。しかしながら、立法側としては、原則損金算入で、一部損金不算入が別段の定めとして設けられているに過ぎないという立場のようです。
実効税率が当時と比較して10%程度引き下げられている一方で、所得税率の税率区分が新設されたり給与所得控除の上限が引き下げられたりしていることからすれば、恣意的な役員報酬の決定が行いにくい上場会社などでは、役員報酬で支払ってもらって所得税等で課税した方が税収という面でメリットがあるのではないかと思いますが、現時点においては損金算入扱いとなる役員報酬の範囲がやや拡大しているにとどまります。
法人税法上の役員の定義
そもそも法人税法上の役員とは何かですが、まず法制上の規定により役員とされている者は、法人税法においても役員として取り扱われます。
法制上の役員には以下の者が該当します。
上記のほか、法制上の役員ではありませんが、持分会社の業務執行社員は役員と取り扱われることとなっています。これは法制上、業務執行機関と位置づけられた者も役員に該当すると整理されているためです(「役員給与・使用人給与」濱田康宏著P5)。
さらに法人税法上は、法制法上の役員でなくとも、法人の経営に従事しているものも、「みなし役員」として役員として取り扱われる可能性がある点に注意が必要です。