導入する会社が登場してきた譲渡制限付株式とは?
3.ストック・オプションとの違いは?
ストック・オプションは権利行使価格と売却価格との差が権利者の利益となるのに対して、株式譲渡制限付株式は、基本的に売却価格全額が保有者の利益となるという大きな違いとなります。
譲渡制限付株式についても取締役会決議で発行するためには、有利発行にならないように払込金額を定める必要がありますが、金銭債権(報酬)を現物出資するという建て付けをとると、譲渡制限付株式取得時のキャッシュアウトは不要ということになりますので、結果的に売却価格全額が保有者の利益ということになると考えられます。
もっとも、譲渡制限付株式を導入するにあたり、金銭報酬を減額するということであれば、売却価格全額が利益ではなくなります。
上記のような違いは、将来の株価が下落した場合に大きな違いとなります。つまり、ストック・オプションの場合は将来の株価が権利行使価格を下回っている場合には権利行使をすることは基本的にありませんが、譲渡制限付株式の場合は株価が下がっていても利益を得ることが可能ということになります。
そのような状況を回避するためには、業績達成条件を付したパフォーマンス・シェアにする必要がありますので、多くのケースではパフォーマンス・シェアが利用されることになるものと推測されます。
ただし、優秀な技術者等を会社に引き留めておくための方策としてであれば、譲渡制限付株式を利用するということも考えられます。
4.ユニット型
譲渡制限付株式およびパフォーマンス・シェアにはユニット型というものもあります。むしろ欧米はユニット型が採用される傾向にあるとのことです。
ユニット型とは何かですが、譲渡制限付株式およびパフォーマンス・シェアが、制度開始時に役員等へ株式を付与する制度であるのに対して、リストリクテッド・ユニット、パフォーマンス・シェア・ユニットは、一定期間経過後または業績条件達成後に株式を付与する制度です。
欧米でユニット型が採用される傾向にあるのは、「期間中の当該役員や従業員の解雇・退職時に、本人が返還に応じない場合に、労働法上の規制や訴訟リスクが存在する」ためとのことです(労政時報第3909号「実質的に解禁された新しい株式報酬」)。
ユニット型は、平成28年度税制改正により事前確定給与として取り扱われる範囲には含まれていないので、採用されるケースは少ないと思われますが、欧米ではユニット型が用いられているという点は覚えておくとよいと思います。