平成28年度税制改正に係る減価償却方法の変更に関する実務上の取扱い(実務対応報告第32号)が公表されました
6月中に公表されることが予定されていた平成28年度税制改正に係る減価償却方法の変更に関する実務上の取扱い(実務対応報告第32号)が平成28年6月17日に公表されました。
この実務対応報告は、平成28年度税制改正によって、法人税法上、平成28年4月1日以降に取得した建物附属設備及び構築物の減価償却方法が定額法に一本化された事に伴うものとなっています。
基本的な取扱いは公開草案から変更はありませんが、公開草案に対するコメントを受けて変更された部分を中心に確認していくこととします。
1.建物附属設備、構築物のいずれか一方を定額法に変更した場合はどうなる?
公開草案に寄せられたコメントの中に、「平成28年4月1日以後に取得する建物附属設備又は構築物のうち、一部の資産について減価償却方法は定率法のまま変更せず、残りの資産について定額法に変更する場合であっても、本公開草案を適用することが認められるか明らかにすることが望ましいと考える」というものがありました。
建物附属設備と構築物のいずれかだけを定率法で償却し続けることを選択するということは、考えにくいですが、何らかの事情でそのような選択をすることもあるかもしれません。
この点について、「コメントへの対応」では、この実務対応報告では平成28年4月1日以後に取得するすべての建物附属設備及び構築物の両方に係る減価償却方法を定額法に変更する場合を想定している旨が述べられています。
したがって、建物附属設備と構築物の双方が存在する場合に、いずれか一方の減価償却方法だけを定額法に変更する場合は、自発的な会計方針の変更と取り扱われることとなります。
この取扱いを明らかにするため、第2項の表現が公開草案より一部変更され、以下のとおり「当該すべての資産」が追加されました。
2. 従来、法人税法に規定する普通償却限度相当額を減価償却費として処理している企業において、建物附属設備、構築物又はその両方に係る減価償却方法について定率法を採用している場合、平成28年4月1日以後に取得する当該すべての資産に係る減価償却方法を定額法に変更するときは、法令等の改正に準じたものとし、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更(企業会計基準第24 号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(以下「企業会計基準第24 号」という。)第5 項(1))として取り扱うものとする。
2.「会計上の見積りの変更と区別することが困難な会計方針の変更」ではないのは何故?
過去、税制改正に対応して会計上も減価償却方法の変更が行われてきたのは周知の事実ですが、平成23年度税制改正に伴う減価償却方法の変更時には、「会計上の見積りの変更と区別することが困難な会計方針の変更」として記載が行われていました。
これに対して今回は「会計基準等の改正に伴う会計方針の変更」として取り扱われるのは何故かですが、この点について「コメントへの対応」では、「会計上の見積りの変更と区別することが困難な会計方針の変更」は自発的に会計方針を変更する場合を前提にしているものと考えられ、実務対応報告第10項から14項で述べられているように、それとは前提が異なるので「会計基準等の改正に伴う会計方針の変更」と取り扱うこととしたとされています。
なお、「会計基準等の改正に伴う会計方針の変更」であるならば、企業会計基準第24号第10項で求められている注記が必要となるのではというコメントに対しては、同項の例外であることを明らかにするため、実務対応報告の記載が修正されています。
4. 本実務対応報告第2項に従って会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱う場合、企業会計基準第24号第10項、第19項及び第20項の定めにかかわらず、次の事項を注記する。
(1) 会計方針の変更の内容として、法人税法の改正に伴い、本実務対応報告を適用し、平成28 年4 月1 日以後に取得する建物附属設備、構築物又はその両方に係る減価償却方法を定率法から定額法に変更している旨
(2) 会計方針の変更による当期への影響額
実務の立場からすれば、法人税法で要請される減価償却方法が変更されたので会計上も減価償却方法を変更したということ以外何もないので、注記事項は簡便であるほど望ましいと考えられます。