会計士と株主はこの取締役候補者の略歴をどう感じるか?-日本取引所グループの株主招集通知より
株式会社日本取引所グループはコーポレート・ガバナンスコード対応の優等生だろうと平成28年3月期の株主総会招集通知を確認していたら、取締役の選任議案に目がとまりました。
社外取締役の候補者の1人が森 公高 氏でした。正直なところ名前だけであれば気にもとめなかったかも知れませんが、株式会社日本取引所グループの招集通知には取締役候補者の顔写真も掲載されていたので、それを見て、会計士協会の会長だった方ではないかと気づきました。
そういえば、この間、日本会計士協会の会長選やってたななどと思い出したのですが、掲載されていた経歴をみてみると以下のように掲載されていました。
記憶違いかと不安になって確認してみると、やはり日本公認会計士協会の前会長であった方であることに間違いはないようです。
監査法人の本部理事を経歴に記載するのであれば、日本公認会計協会の会長も記載しましょうよという気がしますが、もしかして日本公認会計士協会役職は経歴に書いてはならないというような内規があるのかもしれないと他社の事例を確認してみると、そんなこともないようでした。
そもそも、日本取引所の平成28年3月期の有価証券報告書(総会前の提出)において、「友永道子」氏の略歴に「日本公認会計士協会副会長」と記載されています。
その他、役員の状況で「日本公認会計協会」で検索してみると、平成28年3月期の有価証券報告書を検索してみると、「日本公認会計士協会副会長」、「日本公認会計士協会兵庫会副会長」、「日本公認会計協会専務理事」、「日本公認会計士協会常務理事」、そして「日本公認会計士協会会長」まで、かなり多くの記載事例がありますので、記載してはならないというわけではないようです。
同社の他の候補者の「略歴、地位、担当及び重要な兼職の状況」には以下のようなものもあるので、短くしなければならないということでもないようです。
そもそもご自身で立候補して日本公認会計士協会の会長に就任したはずですし、ある意味業界団体のトップなので、「略歴、地位、担当及び重要な兼職の状況」に記載すらされないというのは会計士としては怒るべきところなのかもしれません(といっても、私の場合、名前すら自信があまりなかったのですが・・・)。
もう一つ考えられるとすれば、東芝の件があったので、日本取引所の社外取締役候補者として、問題が発覚した時点で会長であったという経歴をご本人又は会社が隠したかった(明示したくなかった)という可能性もあります。
森氏は、あずさ監査法人のご出身であり、東芝の監査人とは直接関係ないものの、このタイミングで前日本公認会計士協会会長を取締役に選任しようとすれば、株主からの反発も予想されなくはないので、敢えて会計士協会会長の経歴を記載したくないということも理解できますが、逆にそのような反応が予想されるのであれば、株主との建設的な対話を実現するためにもそのような情報をきっちり記載すべきなのではないかという気がしてなりません。
改めて日本取引所グループの役員候補者のリリースを確認してみると、4月28日の「役員候補者の決定について」では森氏は候補者に含まれていませんでした。その後、5月17日の「取締役候補者の追加について」で森氏が取締役候補者として追加されていました。
なんだかんだあったのだと推測されますが、その結果が、上記のような略歴に結びついているのかもしれません。