法人税申告書勘定科目内訳明細書の作り方(その3)-棚卸資産・有価証券
今回は”法人税申告書勘定科目内訳明細書の作り方(その2)”の続きとして、「新版 記載例でわかる 法人税申告書 プロの読み方・作り方 (別表/勘定科目内訳明細書/法人事業概況説明書のチェックポイント)」を参考に「棚卸資産の内訳書」から確認していきます。
6.棚卸資産(商品又は製品、半製品、仕掛品、原材料、貯蔵品)の内訳書
国税庁のHPに掲載されている内訳書のフォーマットは以下のようになっています。
まず迷うのは棚卸資産がたくさんある場合、どう記載すればよいのかです。この点に関連して、記載上の注意点として「品目」欄には、例えば「紳士用革靴」のように記入し、それ以上細分して記入しなくても差し支えありません。」と記載されています。
上記書籍では、この内訳書では、「いくらの金額以上のものは細かく書かなければならないという決まりは特にありません」とした上で、「品名ごとに単価と数量を記入していってもよいですし、あるいは品目数が多ければ同種品目にまとめて「自動車用部品」などとして記入して、単価や数量を省略しても構わないでしょう」と述べられています。
さらに、「会社が作成した棚卸明細書を添付して「別紙参照」と記入する方法でもよいでしょうし、品目数が非常に多い場合は、「明細は会社に保管」などと記入して、勘定科目ごとの合計額を記載する方法でも差し支えないでしょう」とされています。
棚卸資産の品目が多いと別紙参照として棚卸資産の台帳を添付するのも現実的ではないと思いますので、「明細は会社に保管」というような記載になるのではないかと思います。
また、「売上等の事業所別内訳書」においては、事業所ごとの売上高に加えて期末棚卸高の金額も記載する必要があるので、場所毎の集計額を記載しておけば、「売上等の事業所別内訳書」に転記できるので便利とされています。
在庫管理システムを使用している場合は、通常、保管場所別の在庫金額の集計もできるはずなので、特にこの内訳書で記載しておかなくてもよいと思いますが、仮に保管場所が数カ所である場合には、内訳書の記載を保管場所別に記載しておくということも考えられます。
<その他記載上の注意>
- 内訳書の脚注に、期末棚卸の方法を記載する欄があるので、方法および棚卸日を記入する必要があります。
- 評価替えを行った場合には、「摘要」欄に「評価損〇〇〇円」のように評価増減額を記入する必要があります。ここに記載したものについて法人税法上加減算が適切に行われているかを確認する必要があります。
7.有価証券の内訳書
国税庁のHPに掲載されている内訳書のフォーマットは以下のようになっています。
内訳書の脚注に記載されている注意事項は以下のとおりです。
- 「区分」には、「売買目的有価証券」、「満期保有目的等有価証券」又は「その他有価証券」の別に「売買」、「満期」又は「その他」を記入する。
- 売買目的有価証券に属する有価証券については、「期末現在高」欄の上欄に時価評価前の帳簿価額を記入し、下欄にその時価評価した後の金額を記入し、それ以外のものについては、下欄に帳簿価額を記する。また、「計」欄には、下欄の合計を記入する。
- 「期中増(減)の明細」の各欄は、期末現在高がないものであっても期中において「売却」、「買入」、「増資払込」、「評価換」等を行った場合に記入する。
- 証券会社等を通じて売却又は買入をした場合は、その証券会社名等を「売却(買入)先の名称(氏名)」欄に記入する。
- 「摘要」欄には、関係会社のものであるときはその旨を記入する。
BS項目の内訳書ということで、期末残高がないものは記載を漏らしてしまいそうですが、上記3.のとおり期首時点で存在した有価証券については記載が求められている点に注意が必要です。
なお上記の記載上の注意では「種類」についはて特に述べられていませんが、ここには株式、社債、出資金、投資信託などを記載することとなります。
上記書籍では、このほか、有価証券、投資有価証券毎に合計欄を設けて勘定残高との関連を明らかにすること、債券の場合は摘要欄に償還日を記載することが推奨されています。
また、その他有価証券を期末に時価評価した場合の記載方法については、大会社を想定していないため取り上げられていませんでしたが、有価証券評価差額金、繰延税金資産(負債)あるいは有価証券評価差額金(税効果前)などの項目を追加して期末現在高の合計額がBS残高に一致するように内訳書を作成するのがよいのではないかと思います。
今回はここまでとします。