改正個人情報保護法(その1)ー施行日等
現行の個人情報保護法は平成15年5月に公布され、平成17年4月1日より全面施行されていますが、約10年を経て平成27年9月に改正個人情報保護法が公布されています。
一部施行されている部分もありますが、改正個人情報保護法の全面施行は、「公布の日から起算して2年を超えない範囲において政令で定める日から施行する」とされています。
よって、遅くともあと1年以内には全面施行されることとなります。ただし、施行日は、平成29年の春以降という予測が一般的のようですので、あと半年程度の猶予はありそうです。
個人情報保護委員会のHPを確認したところ、平成28年9月8日に「個人情報の保護に関する基本方針の一部変更案」について意見募集が開始されていました(意見募集期間は10月7日まで)。今後、これらが確定していくこととなりますので、個人情報保護委員会のHPは定期的にチェックしたほうがよさそうです。
次に、改正個人情報保護法による主な改正内容を確認してきます。
1.「要配慮個人情報」の新設
改正個人情報保護法でも、現行法と同一の「個人情報」が保護対象となりますが、法の趣旨を明確化することを目的として、定義規定に「要配慮個人情報」という新たなカテゴリーが追加されています。そして改正法2条3項において、「要配慮個人情報」は以下のように定義されています。
「要配慮個人情報」とは、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報をいう。
従来から、会社が健康診断等実施等の結果により把握した従業員の病歴等はセンシティブ情報として、取扱いに配慮が必要とされていたと思いますが、このような情報が改正法の下では「要配慮個人情報」として、明確に定義されています。その他「要配慮個人情報」として列挙されている内容については、従来から注意を要するものとして取り扱われていることが通常だと思いますが、個人情報保護法でいうところの個人情報に該当するものとして取り扱うことが必要とされることとなります。
なお、上記の定義でいうところ「その取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等」について個人情報の保護に関する法律施行令2条では以下のように定められています。
第二条 法第二条第三項の政令で定める記述等は、次に掲げる事項のいずれかを内容とする記述等(本人の病歴又は犯罪の経歴に該当するものを除く。)とする。
一 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の個人情報保護委員会規則で定める心身の機能の障害があること。
二 本人に対して医師その他医療に関連する職務に従事する者(次号において「医師等」という。)により行われた疾病の予防及び早期発見のための健康診断その他の検査(同号において「健康診断等」という。)の結果三 健康診断等の結果に基づき、又は疾病、負傷その他の心身の変化を理由として、本人に対して医師等により心身の状態の改善のための指導又は診療若しくは調剤が行われたこと。
四 本人を被疑者又は被告人として、逮捕、捜索、差押え、勾留、公訴の提起その他の刑事事件に関する手続が行われたこと。
五 本人を少年法(昭和二十三年法律第百六十八号)第三条第一項に規定する少年又はその疑いのある者として、調査、観護の措置、審判、保護処分その他の少年の保護事件に関する手続が行われたこと。
そして要配慮個人情報は、原則として同意がなければ第三者に提供することはできないとされていますので、会社が保有している要配慮個人情報を見直しておく必要があります。