監査報告書原本の写しが添付されるようになると面白いかも
前回に続き監査報告書についてです。2016年3月8日に金融庁に設置された会計監査の在り方に関する懇談会から”「会計監査の在り方に関する懇談会」提言 -会計監査の信頼性確保のために-”なるものが公表されていますが、その中で「監査報告書の透明化等」という項目が取り上げられています。
これは、先行しているイギリスに続きEUでも長文式の監査報告書が導入されることとをふまえ、日本でも監査報告書の在り方について検討を進めていきましょうというような内容となっています。
現行の制度に、EDNETで開示される有価証券報告書等に添付される監査報告書等は「上記は監査報告書の原本に記載された事項を電子化したものであり、その原本は当社(有価証券報告書提出会社)が別途保管しています。」というような脚注が付されたものとなっています。
そのため、たまに強調事項が付記される監査報告書はありますが、基本的には定型フォームで何の面白味もないものとなっています。
上記の通り、EDNETで開示される監査報告書は電子化されてしまっていますが、日本取引所のHPで公表される新規上場時のIの部に添付される監査報告書は原本の写しが掲載されています。監査報告書の原本は法人間のフォームの違い等々、なかなか興味深い点もあります。
例えば監査法人トーマツの監査報告書の原本では署名欄に下線が付されています。署名する部分に下線を付してあるのはトーマツの監査報告書だけのようです。トーマツの場合、最大4名で署名することがあるようですので、他の方の署名スペースを侵食しないように、スペースを明確にしておく必要性が高いかもしれません。
また、トーマツもあずさも印鑑の大きさは必ずしも統一されていないようですが、新日本監査法人は印鑑の大きさが統一されているようです。だからどうしたということもないのですが、例えば4名連名で署名されている監査報告書の一番下の署名者の印鑑が一番小さいような場合、上位者にちゃんと意見できるのかなというような勘ぐりも生じます。
さらに、トーマツ、あずさ、新日本、あらたの監査報告書では、押印は署名者のものだけですが、太陽監査法人および優成監査法人は法人名の部分に法人の印鑑が押印されています。また、確認できたのが1社だけなのでなんともいえないものの、優成監査法人の場合は印鑑の字体も統一されているように見えます。
上位者の印鑑に「公認会計士」が入っている場合には下位者の印鑑にも「公認会計士」が入っているというように、印鑑について全体的には、よく言えばチームワークがよさそう、悪く言えば師弟関係が強そうというような感じがします。また、筆跡も似たもの同士といえるようなケースも多く、暇なときにIの部を眺めてみるのも面白いのではないかと思います。