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エフオーアイの粉飾決算で主幹事証券に賠償責任が認められた判決ー東京地裁

事後的に上記の流れを見てみると、一般的な感覚としては上場前に止められたのではないかという感じは受けます。

話を登場人物の責任に戻して、監査役の責任ですが、裁判において監査役は粉飾を認識していなかったと認められており、監査役として相当な注意を用いたにもかかわらず有価証券届出書の虚偽記載を知ることができなかったと認められるかどうかが検討されたとのことです。

この点について、「監査役らは、定期的に監査役会を開催し、業務監査に関する事項を協議していたほか、期末決算監査に関する会計監査人とのミーティングを行うなど、一応の監査を行っている」と認められたものの、「取締役らの違法行為は、本来監査役の業務監査によって是正されるべきもの」であり、「監査役は、エフオーアイの売上げが急増したにもかかわらず売掛金の回収が進まない状況において、架空の売上げが計上されている可能性について疑問を抱き、売上げの実在性について独自の調査を行うなどの対応を執ることは十分に可能であったというべきであるが、会計監査人の報告を受ける以外にかかる観点から何らかの調査を行ったことをうかがわせる証拠はなかった」(T&A masetr No.681)とされ、「また、監査役会において、上場申請取下げの理由について他の役員ら又は主幹事証券会社に問い合わせをするなどして調査すれば、第1投書の存在を認識することは十分に可能であったというべきであり、その上で監査役の権限を行使して調査を行えば、エフオーアイにおいて粉飾決算が行われていた事実が判明していた可能性がないとはいえない」とし、「監査役らは、相当な注意を用いて監査を行っていたとは認められない」と判断されました。

一般的な感覚としてはそうだよなと感じる一方で、仮に上記の「また、」以降の状況がなかった(怪しげな投書がなく、単に売掛金の回収が進んでいないだけ)であったならば監査役の責任は問われなかったのだろうかという点は疑問が残ります。

会計監査人設置会社では会計に関する部分の監査について、監査役は会計監査人の結果に依拠するという建て付けになっています。正確には、監査役は会計監査人の監査の方法と結果が相当であるかどうかを判断しなければならないとされているに過ぎませんが、会計監査の専門家である会計監査人の監査の方法や結果が相当であるかどうかを判断しなければならないというのは現実問題としては酷であると思われます。そういった意味では、監査役のうち1名は監査法人の出身者をいれておくのが無難という事なのかもしれません。

次に主幹事証券(旧みずほインベスターズ証券)ですが、裁判においては「そのため主幹事証券会社である元引受証券会社に関しては、財務諸表に表示されたエフオーアイの財務情報については、会計監査人による適正かつ合理的な監査を経たものであり、一応これが実態を反映した正確なものであると信頼することが許されるというべきであり、これと矛盾するような情報に接したり、本件粉飾を疑わせる事情に係る審査において当該信頼が揺らぐような事情が判明したりしない限り、当該財務情報が正確であることを前提に引受審査を行うことが許される」とされ、「主幹事証券会社については、粉飾を疑わせる事情について十分な審査を行ったとしているが、匿名投書に対する対応については不十分であったと認定」されたとのことです。

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