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税務調査による更正が「誤謬」か否かの境界は何?

2017年3月16日に公表された「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」(企業会計基準第27号)では、更生等による追徴を受ける場合の取扱いについて、以下のように規定されています。

6. 過年度の所得等に対する法人税、住民税及び事業税等について、更正等により追加で徴収される可能性が高く、当該追徴税額を合理的に見積ることができる場合、企業会計基準第 24 号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(以下「企業会計基準第24 号」という。)第 4 項(8)に定める誤謬に該当するときを除き、原則として、当該追徴税額を損益に計上する。なお、更正等による追徴に伴う延滞税、加算税、延滞金及び加算金については、当該追徴税額に含めて処理する。

つまり、「誤謬」であれば修正再表示、「誤謬」でなければ当期の損益(「過年度法人税等」として計上されることが多い)として計上ということになっています。

従来の「諸税金に関する会計処理及び表示に係る監査上の取扱い」(監査・保証実務委員会実務指針第63号)においても、「法人税等の更正、決定等による追徴税額及び還付税額は、過年度遡及会計基準及び過年度遡及適用指針に基づき処理することになる(過年度遡及会計基準第55項参照)。なお、これらが過去の誤謬に起因するものでない場合には、損益計算書上、「法人税、住民税及び事業税」の次にその内容を示す名称を付した科目をもって記載する。ただし、これらの金額の重要性が乏しい場合には、「法人税、住民税及び事業税」に含めて表示することができる。」とされていたことから、取扱いに基本的に変化はありませんが、「誤謬」に該当する更正と該当しない更正の違いは何かが問題となります。

そもそも「誤謬」とはなんだったかですが、遡及会計基準の定義は以下のとおりです。

原因となる行為が意図的であるか否かにかかわらず、財務諸表作成時に入手可能な情報を使用しなかったことによる、又はこれを誤用したことによる、次のような誤りをいう。
① 財務諸表の基礎となるデータの収集又は処理上の誤り
② 事実の見落としや誤解から生じる会計上の見積りの誤り
③ 会計方針の適用の誤り又は表示方法の誤り

単純なミスが「誤謬」に該当するのは当然として、その他、税務調査で更正を受ける項目としては、法令の解釈誤りや適用誤りが多いと思われますので、基本的には「誤謬」に該当するものと考えられます。ただし、「誤謬」であっても重要性がない場合はあえて修正再表示を行うことはないと思いますので、重要性がない場合は当期の損益として処理するということで問題はないと思われます。

では重要性がある場合は、修正再表示を行うのかですが、修正再表示を行っている事例は稀で、たとえ金額が重要であっても「過年度法人税等」当期の損益として計上していることが一般的です。

たとえば、2017年5月12日に決算短信を公表したオプティム(東一)は第2四半期において「佐賀税務署による平成25年3月期から平成28年3月期までの課税年度における税務調査において、研究開発費で計上している案件の損金算入時期などで指摘を受け」たことにより、138百万円の過年度法人税等を計上しています。

この金額水準ですが、同社の決算補足資料では、「計画外でありました過去4期分の過年度法人税138,265,000円を期中に計上することとなり、当社の利益水準から勘案しますとその影響は非常に大きく」とされており、重要性があるという点は間違いなさそうです。

では何故、修正再表示や訂正報告ではなく、当期損益として処理されているのかですが、更正は「見解の相違」によるものと位置付けられているためと考えられます。同社の2Qの補足資料では「税務当局からの指摘につきましては、見解の相違する部分もありますが、当局からの指摘を受け入れる予定でおります。」とされており、単純なミスではなく「見解の相違」によるものなので「誤謬」ではないという理屈と思われます(とはいえ、指摘を受け入れるということから、争っても勝ち目は薄いというのが実態ではないかと思われます)。

監査上も重要な「誤謬」であれば修正再表示が求められるはずですが、「過年度法人税等」で表示することが許容されていることからすれば、単純な誤りではなく「見解の相違」であり、どっちにも転びうるという内容だということなります。

ただし、穿った見方をすれば、監査的には未払法人税の計上額の妥当性の判断を誤っていたとはいいたくないので、とりあえず「見解の相違」ということに同意しておこうという面もあったかもしれません(特に会社自体の業績等に問題がない場合は、究極的なリスクも低いので穏便に済ませたいという面はありえます)。

結局のところ、重要性が乏しいか重要であっても「見解の相違」といえる可能性があるものであれば当期の損益として処理するということでよいといえそうです。

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