内々定の法的性格は?
経団連の取り決めを律儀に守ろうとする場合、新卒の採用にあたり実務上、学生に対して内々定を出すことが多いと思いますが、この内々定の法的な位置づけはどのようなものなのだろうというのが問題となります。
内定の法的な性格については、始期付解約権留保付労働契約が成立している解されおり、採用内定通知または誓約書に記載されている採用内定取消事由が生じた場合には契約を解約できる旨の合意が含まれており、また卒業できなかった場合も当然に解約できるものと解されています(「労働法 第10版」菅野和夫)。
これは逆に言えば、合理性のない内定取消の場合には、その解約は無効となり、内定者は労働契約上の地位を裁判所に確認してもらえることとなります。
では、内々定はどうなるのかですが、この点については、「内内定関係は、多くの場合に企業と応募者の双方とも(または少なくとも応募者の方が)それにより労働契約の確定的な拘束関係に入ったとの意識には至っていないと考えられるので、判例法理における始期付解約権留保付労働契約の成立としての「採用内定」とは認めにくい」(「労働法 第10版」菅野和夫)とされています。
ただし、「これは個々のケースによって異なりうる問題であるから、「採用内内定」は、当該ケースにおける拘束関係の度合いによっては、「採用内定」と認められることもありうるし、またその「予約」として、恣意的なな破棄について損害賠償責任を生じさせる意義をもつこともありうる」(同上)とも述べられている点には注意が必要です。
まとめると、内々定には基本的に法的拘束力はないと考えられるものの、学生に内定は確実と期待させておきながら内定を出さないようなことがあると、信義則違反等を理由に損害賠償責任を負う可能性があるということになるといえます。