平成29年度税制改正(その4)-法人税等関連(試験研究費の税額控除)
すこし間隔が開きましたが、平成29年度税制改正について、今回は試験研究費の税額控除の改正内容を確認します。
付加価値の高い財・サービスを生み出していくために研究開発投資を増加させることを主な目的として、平成29年度税制改正では以下の5つの改正が行われています。
- 総額型の税額控除に投資増加のインセンティブを組み込み、試験研究費の増減割合に応じて6~14%の範囲内でメリハリがつく仕組みが導入されました(従来は8%~10%の範囲内で増減)
- 増加型の税額控除が廃止された一方で、高水準型の適用期限は2年延長され、その高水準型との選択適用で、総額型又は中小企業技術基盤強化税制の控除税額の上限が10%まで上乗せされました。
- 中小企業への支援を強化するため、従来の控除率12%、控除上限25%を維持した上で、試験研究費が5%増加した場合に控除率(最大17%)・控除上限(10%)を上乗せする仕組みが導入されました。
- オープンイノベーション型の手続き要件を企業実務に合わせて緩和し、使いやすくする措置が講じられました。
- 試験研究費の定義を見直し、第4次産業革命型の「サービス」の開発が支援対象に追加されました。
以下、上記の内容のうちいくつかについて、もう少し詳しく内容を確認します。
1.総額型税額控除制度の控除率の変更および控除限度額の上乗せ
増減割合=(試験研究費の額-比較試験研究費の額)÷比較試験研究費の額
上記の算式で計算される増減割合に応じて以下のとおり税額控除理が計算されることとなりました。
増減割合5%超・・・9%+(増減割合-5%)×0.3
増減割合-25%超5%以下・・・9%-(5%-増減割合)×0.1%
増減割合-25%未満・・・6%
上限である14%になるための増加割合を計算すると、増減割合が21.67%以上である場合となります。なお、原則的な控除率の上限は10%で、10%を超える部分については、2年間(平成29年4月1日から平成31年3月31日までに開始する事業年度)の時限措置とされています。
また、高水準型との選択適用かつ2年間の時限措置となりますが、試験研究費の額が平均売上金額の10%を超える場合には、控除税額の上限(25%)に以下の算式で計算された割合(10%上限)が上乗せされることとなりました。
上乗せ割合=(試験研究費割合-10%)×2
2.中小企業基盤強化税制の控除率の見直し
中小企業基盤強化税制については、高水準型との選択適用となりますが、試験研究費増加割合が5%超増加した場合には、以下の算式による控除率(上限17%)および控除額となります(控除率12%超の部分と控除限度額の上乗せ部分は2年間の時限措置とされています)。
税額控除率=12%+(増加割合-5%)×0.3
控除限度額=当期の法人税の35%(25%+10%上乗せ)
3.試験研究費の範囲見直し
研究開発税制の支援対象に、従来の「モノ作り」の研究開発に加え、IoT、ビッグデータ、AI等を活用した「第4時産業革命型」のサービス開発に係る試験研究のために要する一定の費用が新たに追加されました。
いわゆるサービス開発が対象となることとなったわけですが、対象となる業務は新サービスの開発を目的として行う次の業務とされています。
イ 大量の情報を収集する機能を有し、その全部又は主要な部分が自動化されている機器又は技術を用いて行われる情報の収集
ロ その収集により蓄積されて情報について、一定の法則を発見するために、情報解析専門家により専ら情報の解析を行う機能を有するソフトウエア(これに準ずるソフトウエアを含みます。)を用いて行われる分析
ハ その分析により発見された法則を利用した新サービスの設計
二 その発見された法則が予測と結果の一致度が高い等妥当であると認められるものであること及びその発見された法則を利用した新サービスがその目的に照らして適当であると認められるものであることの確認
なお、改正租税特別措置法施工令27条の4第2項では、「次の各号に掲げるもの全てが行われる場合」として①情報収集・取得、②分析、③役務の設計、④確認を掲げているため、これらすべてが実施される予定でない場合は税額控除の対象とはならないとのことです(T&A master No.690)。また、この記事では、そもそも実際にどのようなサービスが対象となるのかもそれほど明確ではないため、結果的に税額控除の適用が否定されるようなケースもでてくるのはないかと述べられていました。
なお、上記全ての工程が同一事業年度で完了する必要はないとのことですが(同上)、研究開発だけに、当初は最後までやる予定であったもののの、事業年度を跨いで途中で断念したようなケースではどうなるのかは問題となりそうです。