決算短信-通期予想のみ開示が約25%に増加
経営財務3313号で東京証券取引所が6月2日に公表した平成29年3月期決算発表状況の集計結果が取り上げられていました。
決算発表の即時性を重視するという名目で短信の簡素化が図られたわけですが、発表までの平均所要日数は39.3日と前年の39.6日とほとんど変化はありませんでした。正確には0.3日の短縮ですが、曜日の関係もあるので、誤差の範囲といってよいと思われます。
最も決算発表が多かったのが5月12日(金)で777社(33.1%)となっています。これに次いで5月11日(木)が306社(13.0%)、5月15日(月)が305社(13.0%)となっています。
短信記載要領の改正により経営方針の記載を取りやめた会社が全体の約83%であるのに対して、従来どおり記載を行った会社も約17%存在しており、一律に記載が求められる事項がなくなったからといって、速報性を重視して従来の記載を大幅に削減して開示したというケースは少ないということだと思われます。
また、サマリー情報の様式の使用義務も撤廃され、業績予想欄の記載も開示の柔軟化が図られていますが、業績予想については2345社の96.5%にあたる2264社が業績予想を開示しているとのことです。
一方で、第2四半期予想を取りやめ、通期業績の予想のみを開示した会社は全体の25.6%にあたる579社(レンジ開示6社を含む)と、昨年の19.2%よりも増加しているとのことです。
株主からすると年度業績予想のマイルストーンとして2Q業績予想も意味があると思いますが、企業側からすると出足が悪ければ、下期に向けてなんとかしようと施策を講じて年度予算を達成しようとするところ、2Qの業績予想との差異を対外的に説明するのは結構手間なので通期のみの予想が魅力的に思えるというのは理解できます。
四半期開示を行うことが短期的な業績にフォーカスしすぎた経営を助長するのではないかという議論は以前からありますが、年度の目標達成にむけて活動している中で2Qの予想が対外的に開示されていることにより、本来必要であると思われるものであっても予算外の費用を使いにくくなるというようなことは考えられます。
このような点からすると業界の変化が激しかったり、規模が比較的小さい会社では年度のみの業績予想開示を選択するという会社数がさらに増加していくのではないかと思われます。