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最高裁、勤務医の残業代は高額年俸に含まれないと判断

2017年7月7日に興味深い最高裁判決が下されました。

これは、神奈川県の私立病院に勤務していた勤務医の高額年俸に残業代が含まれるかで争われたもので、この勤務医の年俸は1700万円で、午後5時半~午後9時に残業をしても時間外の割増賃金を上乗せしない規定となっていたとされています。

このような高額年俸者の残業代請求事件としてはモルガンスタンレー証券事件(東京地裁平成17年10月19日)が有名だと思われますが、この事件では労働者の主張は認められませんでした。

モルガンスタンレー証券事件は、年俸約2200万の為替ディラーが、就業規則で通常の勤務時間として定められていた午前9時より前に行われた早朝のミーティング分の割増賃金が未払であるとして約800万円の支払を求めて訴えを起こしたというものです。

この裁判の中で、労働者側は小里機材事件(最高裁一小 昭63.7.14判決)から、基本給に所定外労働に対する対価が含まれる旨があったとしても、受領した基本給は超過勤務手当相当額が区分されていないため無効である旨を主張しました。

しかしながら、この事案においては、裁判所は以下のような理由から労働者の訴えを退けました。

  1. 当該労働者の給与は、労働時間数によって決まっているものではなく、会社にどのような営業利益をもたらし、どのような役割を果たしたのかによって決められていること
  2. 会社は当該労働者の労働時間を管理しておらず、当該労働者の性質上、労働者は自分の判断で営業活動や行動計画を決め、会社もこれを許容していたこと。そのため、そもそも会社は当該労働者がどれくらい時間外労働をしたか、しなかったのかを把握することが困難なシステムになっていること
  3. 当該労働者は、会社から受領する年次総報酬が以外に超過勤務手当の名目で金員が支給されるものとは考えていなかったこと
  4. 当該労働者は会社から高額の報酬を受けており、基本給だけでも平成14年以降は月額183万円を超える額であり、本件において1日70分間の超過勤務手当を基本給の中に福間手支払う合意をしたからといって労働者の保護に×点はないことが認められること

モルガンスタンレー証券事件当時も、小里機材事件の判例から、基本給に含まれる残業代相当額を区分しておかないとならないという認識はあったものの、上記地裁判決はそれを覆すものでした。もっとも、年俸が約2200万円ということもあり、それはそうだよなと感じた人の方が多かったのではないかと思います。管理監督者の名の下に、それほど高い給料でないにもかかわらず残業代が支給されない場合には、特にそのような思いは強いのではないかと思います。

ところが、今回の最高裁判決では、モルガンスタンレー証券事件と同様に、高額な年俸であっても「時間外の割増賃金は他の賃金と明確に判別できなければならない」という点に例外を設けず、好待遇などを理由に「年俸に含まれる」とした一、二審判決を破棄しました。

今年1月に厚生労働省が「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置 に関するガイドライン」を公表したということは記憶に新しいところですが、このガイドラインを踏まえると、労働時間の把握という部分において、モルガンスタンレー証券事件では会社の状況が褒められたものではありませんが、当時は報酬が高額であるという側面がやはり判断に大きく影響したのではないかと思います。

しかしながら今回の判決で、報酬がいくらであろうと、基本給に時間外手当が含まれているのであれば、個別に把握できなければ認められないということが明らかにされました。

昨日、「高度プロフェッショナル制度」については、一定の修正を条件に連合と合意したという旨の報道がなされましたが、この制度の対象者は年収1075万円以上の者に限られることになるようです。日経ビジネスオンラインの記事では、連合がなぜ合意にいたったのかという点について、”プロフェッショナル制に「年収1075万円以上」という条件が付いていることも、世の中の納得が得られると判断している模様だ。”という点が理由の1つにあげられています。そういった意味では、やはりなんだかなという気はしますが、例外を設けると、報酬がいくらであれば例外が認められるのかという点で曖昧さが残りますので、例外はないというのはそれはそれでわかりやすくてよいともいえます。

上記の2つの裁判例はいずれのケースも労働者が解雇された後で裁判になっているようなので、普通であれば問題とならないのかもしれませんが、「高度プロフェッショナル制度」が導入されると、今後はそもそも上記ほど高額報酬でなくても、そもそも問題にならなくなるのかもしれません。

とはいえ、賃金債権の時効を現行に2年から5年に見直す方向での検討もなされているようですので、会社としては今回の判決を契機に今一度、自社の状況を確認しておく必要があるといえそうです。

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