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濫用的な議決権行使書面の閲覧を制限する方向で会社法改正が検討

株主名簿の閲覧謄写請求権については、会社法125条3項において、以下のように権利の濫用を制限するための規定が置かれています。

  1. 当該請求を行う株主又は債権者(以下「請求者」)がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき。
  2. 請求者が当該株式会社の業務の遂行を妨げ、又は株主の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき。
  3. 請求者が当該株式会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営み、又はこれに従事するものであるとき。
  4. 請求者が株主名簿の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求を行ったとき。
  5. 請求者が、過去二年以内において、株主名簿の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるものであるとき。

一方で、会社法上は、議決権行使書面の閲覧謄写請求権も認められていますが(会社法331条4項)、こちらについては会社法125条3項のような権限濫用を抑止するための規定は置かれていません。

このため、「昨今では、濫用的ともいえる利用も散見されている。」(T&A master No.697)とのことです。具体的には「例えば、毎年同じ株主から議決権行使書権の閲覧謄写請求を受ける状況があるようだ」とされています。場所や立ち会う人員の確保等が必要となりコストもかかるので、”「議決権行使書面の閲覧謄写請求権の濫用的な行使制限」が経済界から要望されている”そうでうす。

そもそも、株主総会決議の取消を訴えるようなケース以外で、権利を濫用してまで議決権行使書面を何故閲覧するのかですが、理由の1つは「株主の住所を閲覧すること」だそうです。

考えたこともありませんでしたが、富裕層をターゲットとしたビジネスを展開している事業者(たとえば株と代替関係にあると思われる投資不動産など)が、株主となって議決権行使書面の閲覧請求権を行使し、議決権数から投資額を判断し富裕層の住所を入手するというようなことは考えられます。現時点においては、そのような情報を販売している事業者から情報を入手することも可能だと思われますが、改正個人情報保護法の施行によりトレーサビリティが要求されることとなっているので、従来にくらべるとそのような情報は流通しにくくなっていくことが予想され、代替策として議決権行使書面の閲覧請求権を利用するということはあり得るかもしれません。

しかも、議決権行使書面の閲覧請求権の行使に保有割合等の条件は設けられていないようなので、自分の手間を考えなければ、ほとんどコストはかかりません(むしろ儲かる可能性すらあります)。

上記のように議決権行使書面の閲覧を請求する目的の1つは株主の住所を確認することにあるそうですが、そもそも議決権行使書面の法定記載事項(会社法施行規則66条)でない株主の住所を、会社がそのまま請求者に開示することは個人情報保護法の観点から問題が
ないのかが気になります。

この点に関して、全国株懇連合会が公表している「株主名簿を中心とした株主等個人情報に関する個人情報保護法のガイドライン」では以下のように記載されています。

(2)議決権行使書・委任状
議決権行使書及び議決権行使に係る委任状についても、株主の閲覧・謄写請求権が認められている(会社法310条7項、311条4項)。
これらの書面又は電磁的記録にも株主の氏名・住所等の個人情報が記載・記録されているが、株主名簿と同様に会社法の規定を根拠として発行会社は従来どおり株主からの閲覧・謄写請求に応じることとなる。
(以下省略)

議決権行使書の閲覧謄写請求権に対応する際に、個人情報保護法の観点から、法定記載事項でない住所等の個人情報をどうしなければならないとは記載されていませんので、実務上はそのまま閲覧に供するということのようです。

相当数の株式を保有していなければ気にする必要はないのかもしれませんが、いくら整理されていない情報とはいえ、法定記載事項以外の情報も入手される可能性があるため、株主名簿と同様の取扱いとすることが一般株主の立場からも強く望まれます。

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