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監査人交代時の開示の充実化を検討

日本公認会計士協会は平成29年6月30日に「監査人交代の理由等に関するアンケート調査結果」を公表しました。

これは、平成28年3月8日付で金融庁が公表した”「会計監査のあり方に関する懇談会」提言-会計監査の信頼性確保のために-”に対応したもので、同提言においては、「監査人の交代の理由・経緯、例えば会計処理に関して企業と監査人との意見の不一致等があったがどうか、は株主や投資家にとって極めて重要な情報である。」とした上で、「臨時報告書による開示については、企業による説明の内容が表層的・定型的となっており、株主等の十分な参考になっておらず、監査法人等からも具体的な意見が出しにくいケースがある、との指摘がある」とされています。

会計士協会が実施したアンケートは、平成26年4月から平成28年3月までに監査人交代で臨時報告書を提出した上場会社216社を対象として実施されたものとされています。

2年間で216社なので年間100社程度は監査人が交代している計算となりますが、216社のうち35社については監査法人の合併となっていますので、実質的な監査人の交代としては181社と考えてよさそうです。

残りの181社のうち158社の異動理由は「任期満了」となっています。この他、期中交代が10社、監査人からの辞任申し出4社、その他が9社となています。

会社法上の会計監査人と金商法監査を行う監査人が別であることはないという前提で考えると、会計監査人については会社法338条2項において「定時株主総会において別段の決議がされなかったときは、当該定時株主総会において再任されたものとみなす。」とされていますので、「任期満了」で交代することが、ある意味異常な事態となります。

しかしながら「任期満了」で監査人を交代した158社のうち118社(74.7%)については、任期満了とのみ記載されていたとのことです。残りはグループ監査人の統一が22社、監査人からの辞任申出が10社、その他が8社となっています。

異動監査公認会計士等の意見が記載されていたのは1社のみとされており、これは東芝の監査人交代に際して新日本監査法人が付した意見となっています。

このアンケート結果で興味深いのは、監査人交代における前任監査人と後任監査人の双方にアンケートを実施しているという点です。

例えば、任期満了による交代のケースで、交代の経緯について前任監査人は88社が会社からの申し入れ、監査人からの申出38社となっているのに対して、後任監査人では会社からの申し入れが98社、監査人からの申出が26社となっています。

アンケートの回答は、必ずしも前任、後任の双方から回収できていないとのことなので、偶然かも知れませんが、結果から見ると10社程度前任監査人と後任監査人で認識の相違が生じています。

さらに、任期満了のケースにおいて、会社からの契約解除申し入れの理由に対する回答も興味深い結果となっています。

監査報酬が折り合わない、監査人の判断・対応が適時になされない、監査チームメンバーへの不満の3項目について、前任監査人の回答は、20社、0社、3社であるのに対して、後任監査人の回答結果は、12社、19社、22社となっています。

監査人の判断・対応が適時になされない、監査チームメンバーへの不満についての前任監査人と後任監査人の認識の違いが著しくなっています。前任監査人と意見の対立があるというような感じだと監査を受けてもらいにくいところ、前任監査人への不満は理由として説明しやすいので、そのような説明が横行しているという可能性も否定できませんが、前任監査人が本当の理由に気づいていないという可能性もあります。

監査報酬が折り合わないという回答をした会社について、大手から中小に監査人を変更した会社では有価証券報告書で確認できたすべてのケースにおいて監査報酬は下がっていたと報告されています。なお、監査人の交代に際して、報酬が50%以上減少したケースも2社あったとされています。

最後に、任期満了のケースで監査人から辞任の申出をした理由についてのアンケート結果においては、「監査リスクが高まった」という項目と「関与先の誠実性に疑問をもった」という項目で前任監査人と後任監査人の回答結果の相違が顕著となっています。

「監査リスクが高まった」については前任監査人が15社に対して、後任監査人は8社、「関与先の誠実性に疑問をもった」については前任監査人が6社に対して、後任監査人は0社となっています。

「監査リスクが高まった」については、監査人から辞任の申出があった場合、後任監査人としては何故というのは間違いなく気にする部分であるはずなので、だまされたというのでなければ、認識していても正直に回答しにくいということなのかもしれません。

「関与先の誠実性に疑問をもった」については、会計士協会の調査に因れば、「会社からの監査契約解除の申入れによるもの」と回答している会社が2社、その他4社は「会計・監査上の見解相違により信頼関係の喪失」等、別の項目で回答しているとのことです。

「どういう仕組みがあれば、真の理由が開示できますか」という質問に対しては、「任期満了」のみの記載を禁止するなど、「運用の改善」が65社で最も多く、次いで「真の理由の開示は困難」が27社、「第三者機関が関与する」が24社で続いています。

監査人としては、守秘義務もあるし、他のクライアントへの影響もあるので、余程のことがなければ意見を述べにくいという思われますので、個人的には会計士協会が「第三者機関が関与する」というのが現実的かなという気はします。

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