収益認識基準により消費税税込み方式は採用不可へ
2017年7月中にASBJより「収益認識に関する会計基準(案)」が公表される予定とされていますが、この基準によると消費税の税込方式の採用は認められなくなるとのことです。
これは、「消費税などの第三者のために回収される額については除外したところで収益を認識することになる」(T&A master No.698)ためです。
上場会社であれば基本的に消費税の会計処理については、税抜処理が採用されていると思われますが、財務諸表の注記に「消費税の会計処理」の記載がなされていることからわかるとおり、現時点においては消費税の会計処理について税込方式を採用することができないわけではありません。
とはいえ、日本公認会計士協会が平成元年1月18日に公表した「消費税の会計処理について(中間報告)」において、「各段階の納税義務者である企業においては、消費税の会計処理が損益計算に影響を及ぼさない方式(税抜方式)を採用することが適当である。」とされたことから、会計監査を受けるような会社では消費税の会計処理については税抜処理が原則的な方法と考えられています。
したがって、新たな収益認識基準が適用されても、この点については影響がないという会社も多いと思われますが、一方で、連結グループの一部の会社で税込方式が採用されているというケースはありえます。
事例を確認して見ると、例えば以下のような会社で税込方式に関する注記がなされていることが確認できました。
1.ソニーフィナンシャルホールディングス㈱(2017年3月期)
消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という)の会計処理は、税抜方式によっております。ただし、損害保険子会社の損害調査費、営業費及び一般管理費等の費用は税込方式によっております。(以下省略)
2.㈱ドリームインキュベータ
消費税等の会計処理は税抜方式によっております。ただし、保険業を営む連結子会社の損害調査費、営業費及び一般管理費等の費用については税込方式によっており、また、資産に係る控除対象外消費税等は投資その他の資産の「その他」に計上し、5年間で均等償却する方法によっております。
3.㈱RVH
税抜方式によっております。ただし、免税事業者に該当する連結子会社(株式会社ミュゼプラチナム)については、税込方式を採用しております。
4.㈱アイビー化粧品
当社の消費税及び地方消費税の会計処理は、税抜方式によっており、控除対象外消費税及び地方消費税は、当連結会計年度の費用として処理しております。連結子会社の消費税及び地方消費税の会計処理は、税込方式によっております。
事例としては、金融・不動産関係の会社が比較的多いという印象を受けましたが、その他の業種でも連結子会社で税込方式を採用していると記載している事例がいくつか見受けられました。
税込方式を採用している会社のシステムが税抜処理に対応していないということは少ないのではないかと思われるものの、システムの改修が必要となるケースも否定できません。
ただし、そもそも税込方式を採用している会社は、重要性が乏しいことも多く、税込方式が許容されるというケースも実務的には考えられます。
なんにせよ、収益認識に関する会計基準が公表されれば、検討しなければならない事項は多岐にわたる可能性がありますので、とりあえずは公開草案からきちんと読み込むという必要がありそうです。