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改正民法で有休の繰越期間も長くなる?

平成29年5月26日に民法(債券関係)の改正法案が成立し、6月2日に公布されています。改正法の施行日は、公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令が定める日とされています。

主な改正項目は以下の項目となっています。

  1. 債権の消滅時効に関わる規定の整備
  2. 法定利率の引下げと見直しルールの制定
  3. 保証人の保護に関する規定の拡充
  4. 定型約款に関する規定の制定
  5. 瑕疵担保と債務不履行の関係の整理

上記のうち、まずは労働関係で実務上、影響が大きそうな項目を確認することとします。

1.民法624条の2の新設

以下の民法624条の2が新設されました。

(履行の割合に応じた報酬)
第624条の2 労働者は、次に掲げる場合には、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。
一 使用者の責めに帰することができない事由によって労働に従事することができなくなったとき。
二 雇用が履行の中途で終了したとき。

民法624条では以下のように定められています。

(報酬の支払時期)
第624条
1.労働者は、その約した労働を終わった後でなければ、報酬を請求することができない。
2.期間によって定めた報酬は、その期間を経過した後に、請求することができる。

民法624条は、期間で定められた報酬は期間経過後でなければ請求できないというものですが、一方で、月給制の労働者が月途中で退職した場合には、労働者は労働期間に応じた報酬を請求できると考えられており、今回の改正によりこれが明文化されました。

新設された民法624条の2について、ビジネスガイド2017年9月号の”「債権法改正」による労働実務への影響と留意点”という記事で、「賞与在籍者払いとの関係」について解説されていました。

賞与については、支給日に在籍していないと賞与支給対象期間に勤務実績があっても賞与が支給されないというケースが多いと思いますが、新設された民放624条の2が施行された場合、支給対象期間の在籍実績に応じた賞与を支給しなければならないのかが問題となります。

この点については、民法の債権法の規定の大半は、当事者間で条文と異なる契約をしたときは、その契約が優先するところ、賞与の支給日に在籍している者のみ賞与支給の対象となる旨が就業規則で定められているのであれば、就業規則の定めが当事者間の労働契約の内容となるため、支給対象期間の勤務実績に応じた賞与を支給しなければならないということにはならないものと考えられるとされています。

裏を返すと、運用上は在籍者のみに支給されているとしても、就業規則において、賞与の支給対象者が在籍者に限られる旨が明記されていない場合には、改正民法施行後は問題となる可能性があるといえそうです。

そのため、賞与支給の対象者の就業規則の定めについて、忘れないうちに確認しておいたほうがよさそうです。

2.短期消滅時効の廃止

改正民法では現行法170条から174条で定められている短期消滅時効の規定が削除され、債権の原則的な消滅時効期間について、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間および権利を行使することができるときから10年間(改正法166条1項)とされています。

未払残業代等の問題で、賃金債権の消滅時効は2年というのが広く認識されていると思われますが、これは現行民法の規定ではなく、労働基準法によるものとなっています。

現行民法174条1項では以下のように定められており、この規定従えば、賃金債権の消滅時効は1年ということになります。

(一年の短期消滅時効)
第174条
次に掲げる債権は、一年間行使しないときは、消滅する。
一  月又はこれより短い時期によって定めた使用人の給料に係る債権
(以下省略)

上記の規定を労働基準法115条が、同法に基づく「賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権」の消滅時効を2年とすることで、消滅時効を2年に伸長しています。

労働者保護の観点から短期消滅時効1年を2年に伸長していたわけですが、改正民法が施行されると、賃金債権の消滅時効は5年ということになります。労働基準法が改正されなければ、民法に対する特別法である労基法の定めが優先され、賃金債権の消滅時効は2年のままですが、上記の記事では「少なくとも民法に合わせて、労基法115条につき、同法に基づく賃金(および災害補償請求権)の消滅時効期間は5年とするか、同条を削除するといた改正がなされるのではないかと予想しています」とされています。

時代にそぐわなくなったと言われ、改正された民法で賃金債権の消滅時効が5年とされていることからすると、労基法で2年が維持されることはないだろうというのはもっともな意見だと思います。

そうなると、未払残業代が問題となった場合、従来は過去2年分がいくらということが問題となりましたが、将来的には5年分が問題となる可能性が高く、問題が発生した場合には、過去データの確認など、従来に比して企業側の負荷が重くなることが予想されます。そういった意味では、勤怠管理など、早い段階で改めて確認しておく必要があると考えられます。

サービス残業が存在せず、未払残業代なんか気にする必要はないという会社であっても、賃金債権の時効が単純に5年とされた場合、年次有給休暇の時効も5年になるとすると影響がないとはいえないのではないでしょうか。管理がより面倒になるということに加え、溜まりに溜まった有給休暇を退職前に一気に取得申請というようなことになると、会社としては厳しいものがあります。

また、IFRSや米国基準で会計処理を行っている会社にあっては、有給休暇引当金の金額が2.5倍に膨らむ可能性もあり、5年分ということになると日本基準でも有給休暇引当金を計上するという会計慣行が広まるかも知れません。

労働者の立場からすれば、消化できない有給休暇を繰り越せる年数が増加するのはありがたいですが、繰越期間が5年になっても消化できないものは消化できないということもありえるので、一定日数以上は買取請求可能という制度にしてもらえるとありがたいと思います。

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