新収益認識基準が税務に与える影響は消費税が問題となりそうです
先日公開草案が公表された収益認識の会計基準ですが、税務通信3469号の税務の動向に「収益認識会計基準 影響が大きいのは消費税と指摘する声」という記事が掲載されていました。
公開草案では、新基準の適用時期は原則として「平成 33 年 4 月 1 日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首ら適用する。」とされていますが、平成31年3月期から早期適用も可能となっています。
会計上も、収益認識会計基準によって大きな影響を受ける可能性がありますが、さらに税務上の取扱がどうなるのかによっては、煩雑な税務調整が必要となる可能性もあります。というよりも普通に考えると、新たに税務上の調整が必要となると考えたほうがよいくらいかもしれません。
しかしながら、税務通信の記事によれば、”「法人税」は企業会計上の収益を容認し、「消費税」は容認しないケースも考えられると指摘する声もある”とされています。収益認識会計基準は、理論的に色々考えていったら小難しくなったという感じがしますが、IFRSでも同様の考え方によっているように、会計理論的には妥当な考え方がとられているものといえます。
したがって、公正な会計慣行による処理として、税務上特段の定めがないものについては、会計上の収益認識が税務上も同様に認められるという可能性はあります。しかしながら、新基準では契約内容を分析することで履行義務を識別し、その上で、取引価格を独立した履行義務に配分し、さらに履行義務充足時にそれぞれ収益認識を行っていくというアプローチがとられることとなるため、見方によっては収益認識に恣意性が介在する余地が従来よりも高くなるとも考えられます。そういった点から、法人税法上、このような収益認識が認められるのかについては個人的には懐疑的ですが、手間は少ない方がありがたいので、上場会社およびその子会社限定でも認めてもらえるとありがたいとは思います。
消費税については、”「消費税」の税額計算の基礎となる課税標準は「課税資産の譲渡等の対価の額」、すなわち、対価として収受する又は収受すべき一切の金銭及び金銭以外の物,若しくは権利その他経済的な利益の額”とされており、収益認識会計基準で例示されている返品権付き販売の処理などにおいては、会計基準上の収益等が消費税法でいうところの「課税資産の譲渡等の対価の額」には当たらないので、現行の消費税法を前提とすると消費税上の取り扱いは税務調整が必要ということのようです。
実務作業的には、消費税も含めて収益認識は同じ基準が一番ありがたいですが、さすがにそこまでは期待できないようです。今後の議論に注目です。