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出る杭はもっと出ろ!

兼業・副業時の残業代は誰が払う?

政府の方針と言うこともあると思いますが、副業や兼業を認めるべきかというような話題を様々な会社でちらほら耳にするようになってきました。

労働時間を規制したいのかしたくないのか、よくわからないところではありますが、定年後(将来もあるのかわかりませんが)に何か今の仕事とは違うことをやってみたいというような夢をもっている場合には、若いうちから副業で関連する仕事をやっておくというのも有用だと考えられます。

特に、将来的に年金の支給開始が何歳になっていくのかもわかりませんし、1億総活躍社会とか人生100年時代とか、長時間労働ならぬ長期間労働を政府が匂わすようになっていますので、若年層は若いうちから特定の会社に縛られないスキルを身につけておくという考えは重要だと考えられます。

従来は多くの会社で兼業や副業が禁止されていたと思われますが、会社としても多様性の確保という観点などから、兼業・副業を認めてもよいのではないかと考える会社も増えてきているようで、従業員からの要望などもちらほらと聞かれるようになっているということが背景にあるようです。

さて、そのような状況においてよく話題になるのが、兼業や副業をおこなっている従業員の労働時間の管理です。

労働基準法では原則として1日8時間、1週間で40時間を超える労働をさせることが禁止されています。そして、この時間計算については、労基法38条1項において「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。」とされています。

典型的には同一の会社のA事業所とB事業所で働いた時間を通算して1日8時間、一週間で40時間が限度ですということですが、ここでいう「事業場を異にする場合」については、使用者を異にする事業場において労働する場合も含まれるとされています(昭23.5.14 基発769)。

したがって、1日8時間労働の会社で従業員として働いている場合、労基法からすると、兼業あるいは副業として他の会社で働くことはできない(正確には使用者は労働者に労働させてはならない)ということになります。

とはいえ、兼業や副業をしていなくても残業することがあるように、36協定の締結などの要件を満たせば使用者は時間外労働を労働者に行わせることができます。

ただし、その場合、使用者は割増賃金を支払う必要が生じます。そうすると、兼業や副業を行ったことによって、労働時間が1日8時間あるいは1週間40時間を超えることとなった場合、割増賃金はだれが支払う必要があるのかということが問題となります。

この点については、実際の労働の前後に関係なく、後から労働契約を締結した方が割増賃金を支払う必要があると考えられています。これは、後で契約を締結した事業主が、労働契約の締結に当たって、その労働者が他の事業場で労働しているかどうかを確認して契約を締結すべきとの考え方によります。

したがって、兼業・副業が当たり前になってくると、新たに従業員を採用する際に、兼業や副業の確認を怠ると、あとで割増賃金を請求されるというようなことも生じてくる可能性は考えられます。そのような可能性を考慮すると、兼業や副業を認めるとしても、秘密保持等の観点からしても最低限届出制としておくことは必要ではないかと思われます。

さらに厄介なのは、「平成22年版 労働基準法・上」では、A事業場で4時間、B事業場で4時間働いている場合、A事業場の使用者が、社員がこの後、B事業場で4時間働くことを知りながら労働時間を延長するときは、A事業場の使用者が時間外労働の手続きを要するものと考えられるという見解が示されているという点です。

主たる事業場側が1日8時間労働であれば主たる事業場側ではあまり気にする必要はないのかもしれませんが、仮に兼業・副業の労働によって時間外労働が60時間を超えることを把握している場合には、割増率が異なるという可能性もありますし、1日8時間未満の所定労働時間を設定しており、法内残業については割増率を設定していないというような場合にも計算結果が異なることとなります。

労働基準法は労使関係において労働者を弱者として、労働者を保護することを目的としているため、異なる事業場での労働時間を通算するという規定は、同じ使用者が労働者をA事業所で7時間、B事業所で7時間働かせることによって割増賃金を支払わないようにするというような脱法行為を防止することを目的としていたというようにも考えられます。

よって、使用者が異なれば労働時間を通算しないという方向に変わっていく可能性はありますが、脱法行為という観点では実質的に同じ使用者が別法人で労働者を長時間割増賃金なしで働かせるというようなことも考えられますので、そう簡単ではないと考えられます。

兼業・副業が広く認められるようになると、それに伴い法律も変化していくことが予想されますが、現段階においては、後で契約した方が割増賃金を支払う必要があるという点は認識しておきましょう。

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