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出る杭はもっと出ろ!

給与較差補填で否認を受けることがないようにするには(その1)

T&A master No.728の巻頭特集で、日本税制研究所代表理事 税理士 朝長英樹氏の「従業員の出稿・出張に伴う税務(1)~出向編~」が掲載されていました。

当該記事では、出向者に対する給与の較差補填の考え方について、通達創設時の創設理由にまで遡った解説がなされており、そのような経緯を踏まえて解釈した場合に比べて、現行の実務においては「給与条件の較差の補填」と「留守宅手当」の範囲が狭く捉えられているのではないかと朝長氏は指摘しています。

同氏はこのような解釈が生じている原因は、「基本的には、次の二つと考えてよいように思われる」として、以下の二点をあげています。

  1. 近年は税法の立法と解釈のいずれにおいても全般的に本質を追究する姿勢が後退してテクニカルに物事を解決しようとする姿勢が強まっていること
  2. 法人が異なるごとに取扱いが違うのがむしろ当然であって出向者や出向先ごとに取扱いが違っても何らおかしくないという当たり前のことが正しく理解されていないこと

出向者に対する給与の較差補填(法人税基本通達9-2-47(創設時は9-2-29))は、制定当時は、正しく理解されており、その後も正しく理解されて運用されてきたが、「近年は、その理解が明らかに表面的で不適切なものとなってきている」とされています。そして、税務調査の調査官も、「法人税基本通達9-2-47の「給与条件の較差の補填」や「留守宅手当」の範囲を狭く捉えている可能性が高いため、まず、調査官に同通達の定めを正しく理解してもらうようにすることが不可欠となる」とされています。

では、以下の法人税基本通達9-2-47を正しく理解するとはどういうことかについて、ポイントを確認していくこととします。

(出向者に対する給与の較差ほてん)
9-2-47 出向元法人が出向先法人との給与条件の較差をほてんするため出向者に対して支給した給与の額(出向先法人を経て支給した金額を含む。)は、当該出向元法人の損金の額に算入する。(昭55年直法2-8「三十二」、平10年課法2-7「十」、平19年課法2-3「二十二」、平23年課法2-17「十八」により改正)
(注) 出向元法人が出向者に対して支給する次の金額は、いずれも給与条件の較差をほてんするために支給したものとする。
1 出向先法人が経営不振等で出向者に賞与を支給することができないため出向元法人が当該出向者に対して支給する賞与の額
2 出向先法人が海外にあるため出向元法人が支給するいわゆる留守宅手当の額

まず、引用は省略しますが、法人税基本通達逐条解説 (八訂版)で行われている解説について、『出向元法人が行う「給与の較差部分の負担」は雇用契約に基づくものであって出向法人において給与の較差部分を負担し得ないという事情があれば出向元法人が負担しなければならないと捉えられていること、そして、この「給与の較差部分の負担」には「留守宅手当」の負担が含まれるとされていることくらいまでは分かるが、それ以上の詳しいことは、よく分からない』とされています。

上記は、法人税基本通達について調べるときに参照することが多い書籍ではないかと思われますが、これでは正しい理解はできないということになります。

その上で、法人税基本通達9-2-47(創設時9-2-29)は、「昭和44年の通達の抜本改正によって新たに創設されたもの」で、創設理由について、当時の国税庁の職員の説明として、以下が引用されています。

出向元法人が出向先法人との給与条件の較差を補てんするため出向使用人に対し支給した金額は出向元法人の損金の額に算入される。給与条件の較差の補てんであるから、出向元法人と出向先法人との間の給与額の較差の補てんだけではない。この取扱いは、出向元法人にとっては現実的に勤務しない使用人に対する支出であり給与とみるかどうかに疑問もあるので、出向元法人が使用人を出向させる場合には、自己の都合によって行われることが多く、出向元法人の負担すべきものと考えることができるからである。
(国税庁審理課長補佐 御園生均「≪解説≫法人税基本通達の制定について」税務弘報 VOL.17 No.8 38頁、昭和44年)

上記解説について、『出向元が支出する金銭が「出向元法人にとっては現実的に勤務しない使用人に対する支出であり給与とみるかどうかに疑問もある」という事情があったためその金銭の額を給与と見るということを明らかにする趣旨で通達が制定され、その金銭を給与とみる理由は、「出向元法人が使用人を出向させる場合には、自己の都合によって行われることが多く、」出向元法人の負担すべきものと考えることができるから」であることが明確に述べられている』としています。

そして、『現実に勤務しない使用人に対する支出」は、使用人の出向が「自己の都合によって行われる」ということであれば、出向元法人は、使用人を出向させることによって、何らかの利益を得るはずであって、「現実に勤務しない使用人に対する支出」も、実際には、対価性のある支出となっており、法人税法22条3項によって損金の額となる、ということである』として、損金算入の根拠はその支出に何らかの対価性があるからであるとされています。そのため、逆にいえば、「出向元法人が使用人を出向させることによって全く何の利益も得ることがないというケースがあったとすれば、形式上、同通達の適用がある状態であったとしても、同通達の適用がないものとして、出向元法人が負担したものの損金算入が否認されることも有り得る」とされています。

なお、法人税基本通達逐条解説 (八訂版)の解説を読むと、『出向元法人と出向者との間に雇用契約があって出向元法人が「給与の較差部分の負担」を行わなければならないということが損金算入の根拠であるかのごとく誤解するおそれがあるが、正確に言えば、それは損金算入の根拠となっているものではなく、負担することとなるものの範囲の根拠となっているものである』と述べられています。

次に損金算入の範囲について、『昭和44年当時の国税庁職員の説明においては、出向元法人において損金の額となるものが「給与額の較差の補てん」ではなく「給与条件の較差の補てん」であると述べられているが、この部分は、法人税基本通達9-2-47が適用される範囲を考える上で、非常に重要となる』とされています。

その上で、『特に、我が国の親会社の従業員が海外の子会社に出向するというケースにおいては、特別な手当等や福利厚生費等の負担が問題となることから、法人税法基本通達9-4-47が「給与」の較差補填ではなく「給与条件」の較差補填に関する取扱いを定めたものであるということを正しく理解しておくことが非常に重要となる』としています。

さらに、通達制定当時の国税庁職員の説明として「給与条件の較差補てんであり給与そのものの較差だけのほてんではないので、たとえば親会社と子会社の福利厚生費等のちがいも含めて親会社が負担しても損金に算入される」(国税庁審理化 桜井巳津男「改正法人税基本通達の重要事項について」税経通信Vol.24 No.8 121頁、昭和44年)という解説から、この通達は「「給与」以外のものも損金の額とすることができるとされていることがよく分かる」とし、「さまざまな目的で支出されたものが損金の額となり得る、ということを意味している点にも、十分、留意しておく必要がある」としてます。

これらを踏まえて、「一部には、我が国の出向元法人が負担した出向者の居住地域国における所得税相当額は「給与の較差補填」ではないことから出向先法人に対する寄附金となるというような主張も見受けられるが、そのような主張は謝っている」とも述べられていますので、この点は覚えていた方よいのではないかと思います。

次に、「留守宅手当」ですが、長くなりましたので、今回はここまでとしますが、できれば原文を一度確認されることをおすすめします。

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