平成30年度税制改正を確認-法人税関連(その4:最終回)
平成30年度税制改正を確認-法人税関連(その3)のつづきです。「税制改正マップ (平成30年度)(あいわ税理士法人編)」と「どこがどうなる!? 税制改正の要点解説 (平成30年度) 監修 朝長英樹」の2冊を参考に、主な改正内容を確認します。
9.研究開発税制等租税特別措置の適用要件の見直し
これは、前回所得拡大促進税制の見直しの部分でも触れていますが、従来研究開発の税額控除を受けていた会社では影響がある可能性があるので改めて取り上げます。
今回の改正により適用要件が厳しくなるのは大企業(中小企業者(適用事業者に該当するものを除く)又は農業共同組合等以外の法人)とされています。
大企業については、平成30年4月1日以後開始事業年度より、以下のいずれかの要件を満たしていないと試験研究を行った場合の税額控除制度(措法42の4)の適用を受けることができないとされました、
- 平均給与等支給額が比較平均給与等支給額を超えること
- 国内設備投資額が減価償却費の総額の10%を超えること
中小企業者は基本的に制限の対象ではないものの、平成31年4月1日以後開始する事業年度からは、各事業年度の開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得金額の平均額が15億円を超える場合には適用事業者として、同様に上記のいずれかの要件を満たさない限り、試験研究を行った場合の税額控除制度等の適用を受けることができないとされていますので、注意が必要です。
なお、試験研究を行った場合の税額控除制度以外で、適用が制限されることになるのは、地域中核企業向け設備投資促進税制(措法42の11の2)、情報連携投資等の促進に係る税額控除制度(新措法42の12の6)となっています。
10.組織再編税制の適格要件等の見直し
組織再編税制においては、完全支配関係法人間の組織再編を除き、適格要件として「従業者従事要件」と「事業継続要件」が課せられています。
例えば、合併では、被合併法人の従業者の概ね8割以上が合併法人の業務に従事することが見込まれていること(従業者従事要件)、そして、被合併法人の事業が合併法人において引き続き行われると見込まれていること(事業継続要件)という要件が設けられています。
改正前は、合併後にグループ内でさらなる従業者又は事業の移転が見込まれている場合、その移転が適格合併による移転でない限りは、当初の合併において従業者要件と事業継続要件を満たさないとされていましたが、平成30年度の税制改正によりこれらの要件が緩和されました。
すなわち、当初の組織再編後に、完全支配関係がある法人間で従業者又は事業を移転することが見込まれている場合にも、当初の組織再編の適格要件のうち、従業者従事要件及び事業継続要件を満たすこととされました。
この要件の見直しは、平成30年4月1日以後に行われる組織再編について適用されるとされています。
11.雇用促進税制の見直し
雇用促進税制ののうち同意雇用開発促進地域に係る措置が、適用期限(平成30年3月31日までに開始する事業年度)の到来をもって廃止されることとなりました。
なお、雇用促進税制は、特定の地域で雇用者を増やすなど、一定の要件を満たした場合には、増加1人あたり40万円の税額控除が認められるという制度でした。
廃止の理由については「雇用情勢が改善されつつあり、必要性が薄れたことが理由と考えられます」(「平成30年度 税制改正マップ」あいわ税理士法人編)とのことです。
12.地方拠点強化税制の見直し
政府が地方創生を目指していることもあり、地方拠点強化税制が一部見直された上で、適用期限が平成32年3月31日まで2年延長されました。
特定建物等を取得した場合の特別償却又は税額控除については、適用期限が2年間延長されたのみとなっています。この制度は、事前に「地方活力向上地域特定業務施設整備計画」なるものを作成し、認定を受けた上で、地方活力向上地域に建物、付属設備、構築物を取得した場合に、特別償却又は税額控除が認められるというものです。
取得価額の合計額は2,000万円以上(中小企業者は1,000万円以上)となっていますので、仮に本社を対象となる地域に移転したとしても必ずしも税額控除等を受けられるとは限りません。
税額控除等は以下の通りです。
種類 | 特別償却 | 税額控除 |
---|---|---|
拡充型 | 取得価額×15% | 取得価額×4% |
移転型 | 取得価額×25% | 取得価額×7% |
次に地方活力向上地域等において雇用者の数が増加した場合の税額控除制度については、雇用促進税制が廃止されたこともあり、一定の要件緩和が図られています。
まず、移転型・拡充型共に、計画認定の要件が、従来は対象設備で10人(中小5人)以上とされていたものが5人(中小2人)に緩和されています。
また、雇用促進税制の適用要件も従来は単年度において全事業所の雇用者が5人(中小2人)以上増加することが必要とされていたものが、移転・拡充先施設の雇用者数が2人以上増加することが必要とされる等(他の要件もあり)の緩和が図られています。
さらに、移転型の場合、従来、移転先は地方活力向上地域に限定されていましたが、準地方地域活力向上地域(近畿圏及び中部圏の中心部)も対象地域に追加されています。近畿圏及び中部圏の中心部が対象とされたことによって、この制度が適用される可能性がほんの少し高まったかもしれません。なお、準地方活力向上地域における税額控除額は「特定業務施設に係る地方事業所特別基準雇用者数×20万円」となっています(ただし税額控除の上限は法人税額の20%)。
以上で法人税関連の主な改正点の確認を終わります。