新株予約権の算定方法は原則登記不要となる方向-会社法改正
会社法の見直しを検討している法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会では、登記事項について、新株予約権と支店所在地の登記の見直しが検討されているとのことです(T&A master No.759)。
新株予約権に関する登記については、現状、会社法911条3項12号において定められており、主なものは以下のとおりです。
- 新株予約権の数
- 新株予約権の目的である株式数、行使機関等の新株予約権の内容の一定事項及び行使条件
- 払込金額又はその算定方法(いわゆる発行価額)等
そして、見直しが検討されているのは上記のうち「払込金額又はその算定方法」とされています。見直しが検討されているのは、「払込金額の算定方法についてブラック・ショールズ・モデルに関する詳細かつ抽象的な数式等の登記を要するなど、全般的に煩雑で申請人の負担になっているとの指摘がある」ためとのことです。
有価証券報告書の新株予約権等の状況の記載では、単に「新株予約権の割当日においてブラック・ショールズ・モデルにより算定される公正な評価額を払込金額とする。」というような記載がなされていることが多いですが、以下の事例のように算式が示されているケースも見受けられます。
上記のような内容を登記することをイメージすれば「全般的に煩雑で申請人の負担になっている」というのも理解できるのではないかと思います。
どのように見直されるかについては、「募集新株予約権について払込金額又はその算定方法(会社法238条1項3号)に掲げる事項を定めたときは、払込金額を登記しなければならないものとし、例外的に払込金額の算定方法を定めた場合において、登記の申請時までに募集新株予約権の払込金額が確定していないときは、当該算定方法を登記しなければならないものとする方向に緩和する」とのことです。
上記のような内容を登記すると、無駄に登記簿の枚数が増えるので、早々に改正を実現してもらいたいと思います。
次に、会社の支店所在地における登記も廃する方向とのことです。現行法では、会社法930条2項において、支店の所在地においても、商号、本店の所在地、支店の所在場所の登記をすることとされていますが、現在ではインターネットの利用による会社検索が容易で、登記情報提供サービスで会社法人番号を利用して会社の本店を検索することも可能となっていることから廃止するとのことです。
いずれも無駄な手間が減るのはありがたい改正だと思いますので、早期に実現されることが望まれます。