収益認識の代替的取扱いで再検討される項目がある?
2018年8月28日にASBJが”「収益認識に関する会計基準」の公表後の対応に関する手順”が公表されています。特に確認していませんでしたが、意外に重要なものだったと今になって気づきました。
上記の手順は、「収益認識に関する会計基準」の結論の背景(第96項)で定められている以下の内容に対応するものです。
本会計基準の実務への適用を検討する過程で、本会計基準における定めが明確であるものの、これに従った処理を行うことが実務上著しく困難な状況が市場関係者により識別され、その旨当委員会に提起された場合には、公開の審議により、別途の対応を図ることの要否を当委員会において判断することとした。
きちんと頭に入っていませんでしたが、実務上著しく困難な状況が提起された場合には、さらに代替的取扱いが追加される可能性があることがあらかじめ予定されていたようです。
この代替的取扱いの追加について、T&A master No.756の特集記事では、検針日基準と売上高又は使用量に基づくロイヤルティについて代替的取扱いが設けられる可能性があると解説されています。
検針日基準については、公開草案に対して電気事業連合会や日本ガス協会などから代替的取扱いを設けるべきとする多数のコメントが寄せられ、ASBJでも、「平均すると半月程度の収益認識のずれが生じ、財務数値(特に利益剰余金)が相当程度生じる可能性があるため、当該影響に関する一定の注記を要件として検針日基準を認める方向で検討が進められていた」とされています。
最終的には、収益認識基準では収益の見積計上が原則であることに加え、検針日基準を認めると、他の業種からの例外的な取扱いの追加要望を受けることが懸念されることなどの理由から、代替的取扱いは設けられませんでしたが、「電気・ガス業界では日本公認会計士協会と収益認識会計基準に従った処理を行う事が実務上著しく困難であるかどうか協議を行っている模様。ポイントは見積もりを行ったとしてもその合理性が検証できるか否かだ」とのことです。
電気やガスは急激に利用者数が増減するものではないので、気温や曜日の関係でそこそこ合理的に予測できるのではないかという気はしますが、仮に今後代替的取扱いが認められたとすると、電力やガスの利用量は予測が困難だというのが実態であるということになると考えられます。
売上高又は使用量に基づくロイヤルティについても、「電気・ガス供給と同様実務上困難であり、企業会計基準委員会に要請があれば再検討することとされており、企業側から同委員会に再提案される可能性が高い」とされています。
現状の取扱いとしては、知的財産のライセンス供与に対して受け取る売上高又は使用量に基づくロイヤルティが知的財産のライセンスのみに関連している場合、あるいは当該ロイヤルティにおいて知的財産のライセンスが支配的な項目である場合には、次の(1)又は(2)のいずれか遅い方で、当該売上高又は使用量に基づくロイヤルティについて収益を認識するとされています(適用指針67項)。
(1) 知的財産のライセンスに関連して顧客が売上高を計上する時又は顧客が知的財産のライセンスを使用する時
(2) 売上高又は使用量に基づくロイヤルティの一部又は全部が配分されている履行義務が充足(あるいは部分的に充足)される時
売上高又は使用量に基づくロイヤルティについては、安定的に発生するものばかりではないので、計算基礎の入手が困難なことにより合理的に見積もることが困難であるということは十分に考えられます。これに加えて、「現金についても取引先からいつの時点で支払われるかわからないといったことが往々にしてある」という問題もあるようです。
契約に従ってきちんと回収すればよいといわれればそれまでですが、特に海外の企業に対するロイヤルティの場合は、そう簡単に回収できるものでもないと考えられ、「場合によっては法人税だけ先払いになってしまうといったケースも想定される」だけに、代替的取扱いへの要請は強いと考えられます。
いずれにしても平成33年4月1日以後開始事業年度からは強制適用となりますので、早めに結論がでることが望まれます。