多数回かつ頻繁に馬券を購入しているも的中率低く雑所得と認められず
馬券の払戻金の所得区分については、最高裁判決により基本的に取扱いが明確になっているといえますが、T&A master No.759に面白い記事が掲載されていました。
この事案は、馬券の払戻金が一時所得か雑所得のいずれに該当するかが争われたというのはいつもどおりですが、多数かつ頻繁に馬券を購入していたと認められたものの、審判所は一時所得とするのが相当であると判断したとされています。
T&A masterの記事によると、「請求人は馬券を自動的に購入するソフトウェアを独自の条件設定を用いて利用し、インターネットを介して多数回かつ頻繁に馬券を購入していたが、そのうちの一年は損失が発生しており、確定申告をした各年で損益が大きく変動していることを指摘。請求人の的中率が低い反面、一口で高額の払い戻しが得られる可能性のある馬券の購入による利益が当該損益の一定割合を占めていることからすると、その期間、頻度、購入規模の大きさ等を考慮しても、多額の利益が恒常的に上がると期待しうるものであったとは認められないとした」とのことです。
もっとも、この事案では、購入履歴および払戻金の一部データが削除・破損していたという事情もあったとされていますが、データが完全であったとしても「的中率が低い」という事実は同じで、結局「多額の利益が恒常的に上がると期待しうるものであったとは認められない」というのも同じだったのではないかと考えられます。
「確定申告をした各年で」となっていますので、きちんと確定申告したにもかかわらず一時所得とされてしまったというのは気の毒な感じはしますが、あらためて国税庁のサイトを確認してみると、「競馬の馬券の払戻金の所得区分等」として以下のように記載されていました。
具体的には、馬券を自動的に購入するソフトウエアを使用して定めた独自の条件設定と計算式に基づき、又は予想の確度の高低と予想が的中した際の配当率の大小の組合せにより定めた購入パターンに従って、偶然性の影響を減殺するために、年間を通じてほぼ全てのレースで馬券を購入するなど、年間を通じての収支で利益が得られるように工夫しながら多数の馬券を購入し続けることにより、年間を通じての収支で多額の利益を上げ、これらの事実により、回収率が馬券の当該購入行為の期間総体として100%を超えるように馬券を購入し続けてきたことが客観的に明らかな場合は、雑所得に該当すると考えます。
工夫の方法には色々あると思うので、的中率が悪くでも回収率がトータルでプラスになるのであれば、それはそれでアリではないかという気はしますが、所詮ギャンブルから得られる利得なので、社会通念としても厳しく判断されがちということなのかなという気はします。