不適正開示の発生傾向
半年以上前の記事ですが経営財務3355号に、東証上場部の方による「事例から学ぶ適時開示 第1回 適時開示制度の概要と不適正な開示の発生傾向について」という記事が掲載されていました。
決算発表が集中する日でなくても、平日はかなりの数の適時開示が行われていますが、年間累計では8万件を超えるそうです。適時開示数が多い会社とそうでない会社に偏りがあるというのが実態だと思われますが、上場会社が3600社程度ですので、このうち短信発表分3600×4=14,400件として、残りを3600社で割ると、単純計算では決算発表以外で1社平均年間で18件程度の適時開示をおこなっているということになります。
ここでいう不適正な開示とは何かですが、”不適正な開示は、「開示漏れ・遅延」と「開示内容の不備」の2種類に大別される”とされています。
では年間8万件を超える適時開示において、不適正開示はどれくらい発生しているのかですが、上記の記事によれば「最近3年間では年間約300件程度で推移している」とされています。
きちんと数えたことはありませんでしたが、適時開示が必要とされる項目数は100項目を超えているとのことで、開示が必要だと知らないものは開示できないので、「開示漏れ」は生じやすいと考えられます。上記の記事よれば、不適正開示のおよそ7割は「開示漏れ・遅延」によるものであるとのことです。
これを防止するためには、改訂の都度東証から送付されてくる「会社情報適時開示ガイドブック」の目次をパラパラと繰り返し眺めて、項目をなんとなく頭に入れておくということが必要になると思います。
もっとも、開示すべき情報を担当者が知らなかったということも起こりやすいので、重要な意思決定に関与する役職者が適時開示項目について十分に理解しておくということも必要となります(現実的には難しかったりしますが・・・)。
なお、不適正な開示は、一部の項目に偏る傾向がみられるとされ、具体的には以下の10項目で全体のおよそ75%を占めているとのことです(2016年度ベース)。
【上場会社の決定事実】
- 固定資産の譲渡又は取得
- 場会社又はその子会社等の役員又は従業員に対する新株予約権の発行その他のストック・オプションと認められるものの付与又は株式の発行
- 定款の変更
- 決定事実として有価証券上場規程に掲げる事実のほか,当該上場会社の運営,業務若しくは財産又は当該上場株券等に関する重要な事項であって投資者の投資判断に著しい影響を及ぼすもの
【上場会社の発生事実】
- 災害に起因する損害又は業務遂行の過程で生じた損害
- 主要株主又は筆頭株主の異動
- 支配株主又はその他の関係会社の異動
- 発生事実として有価証券上場規程に掲げる事実のほか,当該上場会社の運営,業務若しくは財産又は当該上場株券等に関する重要な事実であって投資者の投資判断に著しい影響を及ぼすもの
【上場会社の決算情報】
- 決算の内容
具体例については、次回以降で確認します。