有給休暇を入社日に分割付与した場合の次年度分の付与日はいつ?
働き方改革関連法の一つとして年次有給休暇のうち5日間の強制付与が導入されることとなっていることもあり、有給の付与方法についても合わせて検討が行われていることが増えているようです。
労働基準法では、一定の勤務条件を満たした場合には、入社後6カ月経過時点で10日の有給休暇を付与することが求められています。裏を返すと、法定どおりの取扱いの会社では、入社後6カ月以内に体調不良などで会社を休むと、欠勤扱いになってしまうということが生じます。入社後6カ月経過して付与された有給休暇をすべて消化できれば、いずれにしても欠勤扱いになっていた分が発生したと諦めも付きますが、未消化分があったとすると、従業員としては損した気がするということもあると考えられます。
会社によっては入社日に10日(以上)の有給休暇を付与するという好条件の会社もありますが、いきなりそこまではできないという会社では、入社日に5日、6カ月経過時に5日というような分割付与が検討されることがあります。
法定では6カ月継続勤務しないと有給休暇付与する義務はないものを、それ以前に付与するという労働者にとって有利な取扱いのため、原則としてこのような分割付与は認められます。
このような分割付与をすることとした場合に、よく疑問点としてあがるのが、次年度の付与日がいつなのかという点です。もともと法定では1年6カ月経過時とされているので、1年6カ月経過時に11日付与すればいいのではないかと考えてしまいそうですが、この場合次の付与日は1年経過時となります。
この点については、行政通達(平成6年1月4日基発1号、平成27年3月31日基発0331第14号)において以下の通り述べられています。
(前略)分割付与(初年度において法定の年次有給休暇の付与日数を一括して与えるのではなく、その日数の一部を法定の基準日以前に付与することをいう。)が問題となるが、以下の要件に該当する場合には、そのような取扱いをすることも差し支えないものであること。
イ 斉一的取扱いや分割付与により法定の基準日以前に付与する場合の年次有給休暇の付与要件である八割出勤の算定は、短縮された期間は全期間出勤したものとみなすものであること。
ロ 次年度以降の年次有給休暇の付与日についても、初年度の付与日を法定の基準日から繰り上げた期間と同じ又はそれ以上の期間、法定の基準日より繰り上げること。(例えば、斉一的取扱いとして、4月1日入社した者に入社時に10日、1年後である翌年の4月1日に11日付与とする場合、また、分割付与として、4月1日入社した者に入社時に5日、法定の基準日である6箇月後の10月1日に5日付与し、次年度の基準日は本来翌年10月1日であるが、初年度に10日のうち5日分について6箇月繰り上げたことから同様に6箇月繰り上げ、4月1日に11日付与する場合などが考えられること。)
上記で「以下の要件に該当する場合には、そのような取扱いをすることも差し支えない」とされているので、ロに記載されている「初年度の付与日を法定の基準日から繰り上げた期間と同じ又はそれ以上の期間、法定の基準日より繰り上げること」を満たす必要があるということになります。
したがって、入社日に6カ月後に付与する年次有給休暇の一部を付与することとしている場合には、法定よりも6カ月繰り上げて分割付与しているため、次年度分の付与は入社後1年後より前でなければならないということになります。
また、ここでいう分割付与は「初年度において」とされていますので、1年後に5日・1年6カ月後に6日付与するというような選択肢はありません。
最初の6カ月間は年次有給休暇ではなく特別休暇を数日与え、年次有給休暇は法定どおりに付与していくということや、分割付与を採用するとしても入社日に3日、残りを6カ月勤続勤務時に与えるというようなことも可能です。
採用上のアピールとしても分割付与などが検討される機会が増えているようなので、次年度の付与日についても確認しておくとよいと思います。