アンテナ設置収入は収益事業に該当-東京高裁判決
T&A master No.772に「アンテナ設置収入は収益事業に該当」という記事が掲載されていました。
これはマンションの区分所有者全員で構成される団体であるマンション管理組合がマンション共用部分(屋上)をアンテナ一式に要するスペースとして携帯電話会社に賃貸した収入の課税上の取扱いが争われた者です。
納税者側は、「共用部分の賃料は各区分所有者に帰属するため、この各区分所有者(帰属者)に所得税が課せられるべきであるから、納税者には法人税を課すべきではないと主張していた」とのことです。
アンテナ収入については随分前にこのブログでも取り上げた気がして確認してみると、2014年8月に「マンション屋上の携帯電話アンテナ設置料収入の取り扱い」で国税庁の質疑応答事例に「マンション管理組合が携帯電話基地局の設置場所を貸し付けた場合の収益事業判定」という質疑応答が加えられた旨を記載していました。
課税当局と裁判で争って納税者が勝訴することはあるので、国税庁が質疑応答事例で記載していても、裁判所が異なる判断を下す可能性はありますが、このケースでは東京地裁、東京高裁と国税庁の取扱いを支持した形となっています。
納税者は高裁で「仮に本件賃貸収入が納税者の収入と把握されるとしても、税務上の事業は一定規模以上の収入を想定しているから屋上のごく一部をアンテナ設置場所に賃貸している本件賃貸収入は事業的規模とはほど遠いと指摘し、収益事業には当たらないという主張を展開した」とされ、これに対して裁判所は、「店舗の一角を他の者に継続して使用させるいやゆるケース貸しや広告等のために建物の屋上や壁面等を他の者に使用させる行為も収益事業に含まれるとされていること(法基通15-1-17)や本件賃貸借契約によりアンテナを設置している限り継続して賃料収入が得られることなどを踏まえれば、本件賃貸は収益事業に該当すると判断した」とのことです。
納税者自ら「事業的規模とはほど遠い」としているものの、そうであるならば費用をかけて高裁でまで争うかなという気がしますので、それなりにインパクトのある金額だったのかもしれません。