CG報告書で資本コストの率を明記している事例
2019年1月28日に、「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」が開催されました。
金融庁のHPに掲載されている資料のうち、「改訂コーポレートガバナンス・コードへの対応状況(2018年12月末時点)速報版」によると、昨年のCGコード改正を受けて、全78原則をコンプライしている会社(市場第一部)は2017年7月と比べて13.4ポイント減少しています。
各項目のコンプライ率は上昇傾向にありましたが、昨年の改訂により以下の2項目は2017年7月比で20ポイント以上低下しています。
・補充原則4-10①・・・2017年7月比-27.2ポイント
これは任意の仕組みの活用の補充原則で、改訂により従来「例えば」として例示的な記載となっていた部分が「取締役会の下に独立社外取締役を主要な構成員とする任意の指名委員会・報酬委員会など、独立した諮問委員会を設置することにより、」と独立した諮問委員会の設置が必要という記載になったため「独立した諮問委員会」を設置していない会社が代替的な手段によりコンプライと解釈する余地がなくなったことによるものと推測されます。
・原則4-11・・・・2017年7月比 -27.0ポイント
この原則は「取締役会・監査役会の実効性確保のための前提条件」で、改訂により従来は単に「多様性」となっていた部分が「ジェンダーや国際性の面を含む多様性」とされたことにより、女性役員がいないような場合に「多様性」の解釈によりコンプライとすることができなくなったということが影響していると推測されます。大きくコンプライ率が低下したとはいえ、東証一部上場会社のコンプライ率は69.9%とそれなりに高い数値となっていますので、「国際性の面を含む多様性」は外国人役員がいなくても解釈によってコンプライとしている会社が多いということなのだと思います。
以上の他10ポイント以上の低下となっているのが、政策保有株式(原則1-4:-10.7ポイント)、後継者計画(補充原則4-1③:-17.3ポイント)、経営戦略や経営計画の策定・公表(原則5-2:-10.4ポイント)の2項目で、いずれも改訂があった部分となっています。
原則5-2では、改訂により「自社の資本コストを的確に把握」することが要請されていますが、東証の参考資料において、資本コストを明示している例として以下の事例が取り上げられていました。
なお、調べればすぐにわかるので書いておくと、上記は共立印刷(株)と(株)コメリです。ここまで書くなら株主本コストを何%でみているのかを書いてくれればよいのになという気はします。このような事例はあるものの、CGコード上も「自社の資本コストを的確に把握」することは求められていますが、提示が求められているのは「収益力・資本効率等に関する目標」なので、このような事例はそれほど増加しないものと考えています。
最後に、住友電気工業株式会社 取締役会長の松本 正義の「企業経営の現場からみたコーポレートガバナンスの具体的な課題」の最後に以下のページがありました。
四半期開示の見直しに対する現場の要望は根強いということでしょう。