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意見不表明は極めて例外的な状況のみに許容される

日本公認会計士協会から2022年3月1日付で「監査意見不表明及び有価証券報告書等に係る訂正報告書の提出時期に関する留意事項」が公表されていました。

これは、「会計不正に関する調査完了前に、過年度の訂正報告書が提出され、監査意見を不表明とする」事例があること等を踏まえて取りまとめたものとされています。本来どうすべきなのかという点については、「事実関係の調査が完了し、訂正すべき内容が確定した時点で過年度の有価証券報告書等の訂正報告書が提出されるべきである」と述べられています。意見不表明という選択肢は存在するわけですが、上記の留意事項では、意見不表明は他の意見の種類と異なり、「極めて例外的な状況」にのみ許容されるものであるとされています。

また、訂正報告書の提出時期については、以下の二つの状況に分けて説明されています。

一つ目は、「進行年度の有価証券報告書等の提出期限までに全ての調査が完了し、訂正すべき内容が確定している」というケースで、この場合は進行年度の有価証券報告書の提出期限までに過年度の有価証券報告書等の訂正報告書を提出した上で、進行年度の有価証券報告書等を提出することとなるとされています。不正会計等で過年度の有価証券報告書を訂正しなければならないという事態は、それだけで大変ではありますが、とはいえ、こちらのケースは訂正すべき内容が進行期の有価証券報告書の提出時点で確定しているわけですから、比較的シンプルにすすむといえそうです。

二つ目は、「延長後の有価証券報告書等の提出期限までに事実関係の調査が完了しない場合」で、今回の留意事項が公表されるきっかけとなった事例が該当するとのことです。この場合は、「事実関係の調査が完了し、訂正すべき内容が確定した時点で、企業は、過年度の有価証券報告書等の訂正報告書を提出することになると考えられ」るとされています。

従前はどうだったのかという点について、「調査未了の段階で進行期有報等を提出せざるを得ないケース」として、従前は提出期限の延長期限から8営業日以内に過年度訂正有報と進行期有報等が同時に提出され、いずれも意見不表明となっていたというイメージ図が示されています。

本来(今後の取り扱い)としてどうするのかについては、進行期有報等は意見不表明となるとしても、調査報告等が完了度に提出される過年度訂正有報および進行期の訂正有報については、意見不表明以外の監査意見が表明されるべきと図示されています。

事例としてどれくらい意見不表明というケースがあったのか、2019年4月~2021年3月の2年間で検索してみると6社がヒットしました。6社中5社は中小の監査法人等によるもので、大手監査法人としては2020年4月期のハイアス・アンド・カンパニー株式会社に対してあずさ監査法人が意見表明としている事例がありました。

ハイアス・アンド・カンパニーは意見不表明、監査人が変更になっており、2021年4月の有価証券報告書では限定付適正意見が表明されています。監査人が変更前後で意見表明(不表明)の根拠を抜粋すると以下のようになっていました。

(2020年4月期 監査報告書)
意見不表明の根拠
 会社は、売上高の架空計上などの不適切な会計処理が存在する疑義が認識されたことから、第三者委員会による調査を実施しているが、2020年9月28日付の中間調査報告書において、第三者委員会は、代表取締役及び財務経理・総務部門を統括する取締役(以下、「財務経理担当取締役」という。)を含む複数の取締役による不適切な会計処理への関与又は認識があったこと、及び、2020年7月に財務経理担当取締役がメール保管期限を操作するという当監査法人によるメールデータ保全手続を妨害したものと評価せざるを得ない行為があったと認定している。これらについては、当監査法人においても同様に判断しており、それらに加えて、不適切な会計処理が存在する疑義が認識された後の監査の過程においても、代表取締役による当監査法人に対する虚偽の説明がなされていたと判断している。このことは、監査意見を表明する前提となる、経営者の誠実性について深刻な疑義を生じさせていることから、当監査法人は、上記の連結財務諸表に何らかの修正が必要かどうかについて判断することができなかった。

 

(2021年4月期 監査報告書)
限定付適正意見の根拠
 「追加情報」に記載のとおり、会社は、当連結会計年度に株主からの株主代表訴訟の請求を受けたことを契機として、過年度決算における売上高の架空計上などの疑義に関する調査を開始し、2020年8月31日には第三者委員会を設置し、この不適切会計問題を調査してきた。2020年9月30日には、2020年9月28日付の第三者委員会の中間調査報告書での当該不適切会計問題に関する指摘を受け、会社は、過年度決算を訂正し、遅延していた2020年4月期の有価証券報告書を提出した。しかし、前連結会計年度を含む過年度決算に関して、前任監査人の監査意見は、監査意見を表明する前提となる経営者の誠実性について深刻な疑義を生じさせる事象が存在したことから、意見不表明となった。これに対し、会社では、前任監査人の意見不表明の原因となった経営者が2020年9月30日付で退任し、2020年12月23日開催の臨時株主総会によって新経営体制に移行するなどの経営体制の刷新を図っており、経営の信頼を回復するため経営体制やガバナンスの更なる改革を進めている。
 当監査法人は、前任監査人の指摘を踏まえ、期首残高を含めた当連結会計年度の連結財務諸表についての潜在的な虚偽表示の存否を検討するために、第三者調査委員会の調査や前任監査人の監査状況を検討の上、追加的手続を実施した。
 当連結会計年度の途中まで、前任監査人の意見不表明の原因となった経営者が職務を執行していたため、経営者の誠実性に関する質的に重要性のある監査上の制約が存在したと考えられるが、経営者の交代により当該制約の解消が図られており、かつ、経営の信頼を回復するための経営体制やガバナンスの改革も進めており、現時点では、当連結会計年度の連結財務諸表に及ぼす可能性のある影響は重要かつ広範ではなくなったと判断している。また、第三者委員会の調査や前任監査人の監査での検討結果を踏まえて、当監査法人で実施した追加的手続の結果、期首残高を含めた連結財務諸表について重要な虚偽表示が発見されなかった。
 当監査法人は、これら検討の結果、期首残高を含めた当連結会計年度の連結財務諸表について、上記の制約に関連する未発見の虚偽表示の影響の広範性はないと判断できたが、当連結会計年度の数値と対応数値に影響を及ぼす可能性があるため、限定付適正意見を表明することとした。

 
流れでみるとなかなか興味深いです。

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